コロナ禍で叫ばれる
半導体不足

 2020年の2月頃、新型コロナウイルスによるパンデミックが世界を騒がせ始めました。それとともに始まったのが、世界的な半導体不足の騒動です。半導体不足により、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーの工場が生産を停止し、新車の供給が遅れ中古車の市場が過熱したり、給湯器やエアコンなどの修理用部品がなかなか届かず修理ができるまで長い間待たなければならなかったりするなどの話題がニュースで取り上げられました。これはまさに世界経済を語るうえで半導体が欠かせないことを象徴する出来事です。

 半導体なくしては世界経済を語れない理由は、大きく次の3つにまとめられます。

 1つ目は「半導体はほかの何物にも代えられない」という点です。電子機器を構成する1000個の部品のうち、たった一つの半導体が不足してしまうだけで電子機器が製造できないという事態が発生します。

 スマートフォンやタブレット端末に代表されるように、私たちの生活が急速にデジタル化し、新しい半導体応用機器が普及するのに伴って半導体の需要が伸び続けています。さらに最新機種に使われる半導体の量もうなぎのぼりに増加しています。例えば昔の自動車のスピードメーターは機械式という方式が使われており、トランスミッションの回転数がギアやフレキシブルシャフト、磁石などを介して指針に伝達されて速度が表示されていました。この方法は、機械的な接触によりスピードメーターの指針を動かすため、半導体を必要としません。しかし、現在では機械式のスピードメーターを用いた車はほとんど見られなくなっています。現在スピードメーターに使用されているのは電気式や電子式です。車速センサや車輪の回転センサが受け取った情報を、パルス信号に変換して指針を動かしたり、センサからの情報を元に演算を行ってモニターにデジタル表示したりします。この方式では、センサだけでなく、パルス信号への変換や演算を行う半導体が使われます。このように自動車の中のさまざまな機能が電動化されたり、さまざまな制御が電子化されたりすることにより、半導体需要が増加しているのです。半導体の需要はとどまるところを知らず伸び続けているので、半導体がなくなればあらゆる経済活動が止まってしまいます。