「肥満症」治療薬が登場、外科手術に匹敵する効果の一方で重大な副作用もPhoto:PIXTA

 日本でも「肥満症」を適応としたセマグルチド(商品名ウゴービ)が承認された。

 糖尿病の治療薬として使われている薬剤と同じ成分で、週1回の皮下注射剤だ。最低用量から段階的に増量し、糖尿病治療薬の2倍以上に相当する最大2.4㎎まで増やすことができる。希望すれば自己注射も可能だ。

 添付文書の記載によると、適応は高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかがあり、(1)体格指数(BMI)が27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害──脳卒中や心臓病の既往、睡眠時無呼吸症候群などがあるケース、(2)BMIが35以上で文句なしの肥満症のケース。

 日本人を含む東アジア人が対象の臨床試験では最大用量2.4㎎の投与群で、投与68週時点(およそ15カ月後)で投与開始時点から体重が平均13.2%減少。プラセボ群は同2.1%減だった。

 副作用は、食欲抑制作用の裏返しともいえる吐き気やおう吐、便秘や下痢などの消化器症状で、脂っこいものが鼻につくなど食の楽しみは若干、減りそうだ。

 また、重大な副作用として低血糖や急性膵炎が報告されている。ちまたでいう「やせ薬」感覚で安易に飛びついてよいものではない。問診や対面診療なしの「メディカルダイエット」をうたうクリニックには注意が必要だ。

 また、一足先に肥満症治療薬が出そろった中国からの報告では、GLP-1受容体作動薬と呼ばれる肥満症治療薬のなかでも、セマグルチドは肥満外科手術に匹敵するほど効果が高い一方で、副作用の影響などで投薬を中止するケースが多いことも示されている。

 肥満症治療薬は、使用を中止すると2~3年後には体重の減少率が鈍り、5年もすると元通りの体重に戻ってしまう。一生涯、投薬を続けるのは現実的ではないので、体重が減って心身の軽快さを実感しているうちに、健康的な行動を身につける必要があるだろう。

 近年はダイエット支援のアプリやデバイスが充実している。薬をうまく利用しつつも、薬頼みにならないように自分なりのダイエットプログラムを作っていこう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)