コミットメントの低下と経営陣の焦燥感

 リモートワークと対面ワークのせめぎ合いが発生している組織の状況は、次の5タイプに分けられるだろう。

(1)    リモートはNG。完全にコロナ前に戻す
(2)    基本は対面だが、事情がある場合はリモートワークを認める
(3)    対面とリモートを状況と目的に合わせて併用する
(4)    リモートを中心に、一方で定期的に対面の集まりを実施する
(5)    基本はリモート。どうしても必要なときのみ対面を実施する

 読者の皆さんは、会社および部署ごとにどのあたりを基準にするかについてのルール、もしくはコンセンサスはあるだろうか。そして、どのタイプが許容範囲、または許容外だろうか。

(1)から(5)のどれがいいかというと、経営者側と従業員側で大きな違いと壁がある。

 テスラのイーロン・マスクがかつて全員出社を強要したように、経営陣の中には、かつてと同様の(1)や(2)の出社に戻したいという考えを持つ人もいる。

 理由は、従業員の仕事に向かうマインドの低下である。コロナ以降、最低限のやるべきことしかやらない状況が続いており、新しい取り組みへの士気が上がらないと言う。“笛吹けど踊らず”という状況なのである。とりわけ新規事業を開拓する場合などは、現場に相当なストレスがかかるから、場のエネルギーでもって一気呵成に進めなければにっちもさっちもいかないということは大いにある。

 再度、全体の士気を上げ、個々人にとっての仕事に対するマインドシェアを上げるためには、皆が直接顔を合わせ、会社の未来を語り、アイデアを膨らませ、気持ちを盛り上げていくような機会を作っていかなくてはならない。

 従業員は、家にいても前向きに仕事はできるというが、自分を律することのできる人は実際にはさほどおらず、オフィスと集団という装置の支援がなければ、たいして良い仕事はできないという主張だ。

 確かに一理あるようにも思える。実際に会社に行って従業員同士で顔を合わせれば、仕事の話になり、新しいことを思いついたり、盛り上がったり、否が応でも仕事に対するマインドシェアは上がる。