IT企業の逃税スキームのモデルケースに
またアップルは、アイルランドの子会社を二つ持っており、そのうちの一つは、本籍をヴァージン諸島に置いています。
アイルランドの税法では、アイルランドで設立された会社であっても、居住地が外国にある場合は、その国で課税されるということになっています。そのため、アイルランドの子会社のうちの一つは、ヴァージン諸島で課税されることになるのです。
ヴァージン諸島は、タックスヘイブンであり法人税はかかりません。アップルは、このヴァージン諸島に置いている会社に、グループの利益の大半を集中させました。その結果、アップルは、グループ全体の税負担率を9.8%にまで下げることができたのです。
アイルランドは先進国の中では非常に税法が緩い国です。そのため、アップルは、アイルランドを噛ませることで、タックスヘイブンを使うことができたのです。
アップルが、直接、タックスヘイブンに利益を集中させようとしても、アメリカの税法が許しません。しかし、アイルランドを経由することで、アメリカのタックスヘイブン対策をかわすことができたのです。
しかも、アップルは、二つのアイルランドの子会社の間に、オランダの子会社を挟ませています。これにより、アメリカの税務当局の追及を完全にかわすことができたのです。
このアップルの手法は、「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ダッチ・サンドウィッチ」と呼ばれています。
「二つのアイルランドでオランダをサンドウィッチする」という意味です。
この手法は、IT企業の逃税スキームのモデルケースとなり、ほかのアメリカのIT企業も続々と真似をするようになりました。
アップルは、このスキームにより、アメリカでの税金を約24億ドル免れたとされています。24億ドルということは、日本円にして約2600億円です。