米税務当局がアマゾンの後ろ盾に

「日本で商売をして儲かった金は、日本で税金を払うべき」というのは、普通に考えれば当たり前の話です。

 日本企業が、アメリカで商売をして儲かった場合はアメリカで納税しています。

 にもかかわらず、なぜこういう無理なことがまかり通ったのでしょうか?

 実は、国際間の税金ではこういうことは、よくあることなのです。

 他国籍企業やグローバルで収入がある人の税金については、関係各国で結ばれた「租税条約」に基づいて課税されることになっています。「租税条約」というのは、表面上は、お互いの国が平等にできています。

 しかし、細かい実務の運用となると、両国間での協議となります。そして、両国間の協議では、その国同士の力関係が大きくモノをいうのです。

 たとえば、日本のプロ野球に来る助っ人のアメリカ人は、日本で所得税を払うことはほとんどありません。が、日本人選手が大リーグに行った場合は、アメリカで所得税を払っていることがほとんどなのです。日本とアメリカの外交関係は、表向きは平等になっています。しかし、実務運用面となると、アメリカ有利になることが多々あるのです。

 日本とアメリカとの関係は、今でも実質的には「不平等条約」なのです。

 アマゾンは、現在、先進国を中心に、世界中でビジネスを行っています。

 そして、アマゾンもスターバックスなどと同様にタックスヘイブンをうまく活用して、大幅な節税を行っています。

 アマゾンは、子会社を税金の安いタックスヘイブンに置き、グループ全体の利益をそこに集中させて、節税をしているのです。クレジットの決済機能をアイルランドのダブリンに置いたり、ヨーロッパでのビジネスの利益はルクセンブルグに集中するようになっています。アイルランドもルクセンブルグも、タックスヘイブンであり、特にルクセンブルグは、アマゾンに対してはさらなる税優遇措置を講じています。

 もちろん、これは世界中から非難を浴びています。

 が、アマゾンは、グループ全体の納税額の半分をアメリカで納めています。

Apple、Amazonの周到すぎる「税逃れ」とは?国税OBが“不平等条約”のウラ側を解説『脱税の世界史』(宝島社新書) 大村大次郎 著

 2013年を例にとると、アマゾンは全世界で300億円程度の税金を納め、その約半分はアメリカに納めています。

 実は、ここがミソなのです。

 アメリカにもっとも多くの税金を納めることで、アマゾンはアメリカの税務当局の心証をよくしているのです。そのため、アマゾンがほかの国から課税問題でもめたときには、「文句があるならアメリカ政府に言え」ということができるのです。アメリカの税務当局は、アマゾンがほかの諸国で税金を払うよりは、自国で税金を払ってもらいたいと思うわけです。結果、アメリカの税務当局がアマゾンの後ろ盾になる形で、アマゾンのグローバル節税が可能になっているのです。