スカイダイビングのような最悪のストレス下(少なくとも私にとってはそうだ)であっても、人によっては興奮や喜びを感じるものだ。ストレスに対して、戦うか逃げるのかではなく、冷静に認知して受け入れ、できることならポジティブな認識へと受け止め方を変えることが大事ということだろう

余命や人間関係の「量」と
ストレスの関係は?

 では次の「(2)余命が減るたびに、ストレスが増していく」はどうだろう。(1)で論じられたように、考え方を変えていけばいいということでもあるのだが、レポートでは、「加齢(エイジング)のパラドクス」というものが論じられている。

 加齢のパラドクスとは、「高齢期に様々な精神機能・身体機能が低下するなどのネガティブな状態を経験するにもかかわらず、幸福感は低下しにくいという現象を指す」(公益社団法人日本心理学会)という。

 パートナーを失ったり、病気や事故に見舞われたりするなど、人生を大きく揺さぶる出来事は、高齢が原因となって経験することが多い。心臓病や関節炎、がん、睡眠障害など、高齢者に多く見られる病気や症状も、大きな痛みや身体的な制約をもたらす。これらの状況は、若い頃にはなかったもののはずだが、だからといって、心が動揺するとは限らないということだ。年齢を重ねるごとに、ストレスは減っていくのだという。

 最後は、「(3)人間関係の量が少ないことは問題だ」という誤解だ。

 人間関係が少ないと問題が起きやすいというのは、かねて指摘されてきたことだ。例えば、スウェーデンで、1万7000人以上の男女を6年間追跡調査した結果、最も孤立と孤独を報告した人は、良好な社会的ネットワークを持つ人と比較して、早期死亡のリスクがほぼ4倍であることが明らかになっている。しかし、前出のハーバードのレポートでは、以下の点が指摘されている。

「驚くべきことではないが、人間関係の質は非常に重要である。結婚生活が困難だったり、人間関係が負の方向に傾いていたりする場合、その関係は有害となり、助けにはならないという研究結果が存在する。乳がんを患い、パートナーや配偶者と共に生活している女性を対象とした研究では、人間関係のストレスが回復にどのように影響するかが調査された。その結果、最初の診断から5年後でも、ストレスの多い関係にいる女性は、安定した関係にある女性に比べて回復が遅れ、精神的な苦痛が深刻で、身体の健康状態が悪化し、身体活動が大幅に低下していたことが明らかとなった」

 人間関係は質より量ということが強調されている。確かに、人間関係が少ないのは寂しいものの、多いからといって煩わしいと感じるのも私たち人間であろう。人間の心というのは、定量化できないのだ。

 以上のように、人間が感じるストレスについては、パッと感じていた常識とは少しかけ離れたところに正解があるものだ。ある人にとってはひどいストレスであっても、ある人によっては自分を鼓舞するものであったりする。

 ハーバードのレポートが示すように、ストレスから逃げず、冷静に受け止め、良い方向に転換していきたいものである。