受験の時のお父さんとお母さんの話が泣ける…

阿部 読んでみて、どこが一番良かったですか?

芝山 1番良くてちょっと泣いちゃったのは、第2章『「志望校全落ち」の先に』ですね。模試の時にクラスメイトに「静かにしろよ」と辛く当たったり。

「人を立ち上がらせたり、背中を押してあげたりする本ですね」阿部広太郎(あべ・こうたろう)
1986年3月7日生まれ。埼玉県出身。中学3年生からアメリカンフットボールをはじめ、高校・大学と計8年間続ける。2008年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、電通入社。人事局に配属されるもクリエイティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。「今でしょ!」が話題になった東進ハイスクールのCM「生徒への檄文」篇の制作に携わる。作詞家として「向井太一」「円神-エンジン-」「さくらしめじ」に詞を提供。Superflyデビュー15周年記念ライブ“Get Back!!”の構成作家を務める。2015年から、連続講座「企画でメシを食っていく」を主宰。オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」では、2020年の「ベスト先生TOP5」にランクイン。「宣伝会議賞」中高生部門 審査員長。ベネッセコーポレーション「未来の学びデザイン 300人委員会」メンバー。「企画する人を世の中に増やしたい」という思いのもと、学びの場づくりに情熱を注ぐ。著書に『待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め』(弘文堂)、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

阿部 本当に辛かったですね。あの時は。

芝山 そんな子じゃないんですよ、阿部少年は(笑)。「静かにしろよ」って怒ってしまって、自分のキャラも忘れてしまうぐらい追い込まれてるやんって思ったんですけど、それくらい本気やったんやなって。毎日頑張っている中で、お母さんが夜食のおにぎりを持ってきてくれたり。受験の日、お母さんとお父さんが試験会場に迎えに来て、すごい頑張ってて、もうヘロヘロになってる「君」に、「どうだった?」って聞かなかったんですよ。俺ちょっと泣いちゃいましたね。あそこすごくいいシーンだなと思って。

阿部 そして、この本の最後の章の第7章では、「君」に子どもができて、どう幸せにしていくかっていうところをすごく考え続けています。ジャンルとしては自己啓発の本なんですが、自分を肯定できる本であってほしいと願っています。

芝山 本当にもうこの本はね、自己肯定感が上がる。阿部さんもこんな感じなんだから、俺も大丈夫っしょ!って思えた時に、あ、これは他人を肯定することでもあるなと僕は思ったんですよ。これは人を立ち上がらせたり、背中を押してあげたりする本ですね。これぞ、阿部広太郎の本やなと感じました。この本を配ったら戦争なくなる(笑)。もう一つ言わせてもらうと、阿部さんぐらいの人が、なんかちょっと始めたいって言って、すぐやめちゃうんですよ。えー、阿部広太郎もこんな感じでやめたりすんの~!って(笑)。

阿部 大学生の時に、公認会計士の予備校に通い出したものの気持ちが続かなくて、すぐやめてしまったんです。あの時、親に払ってもらった入学金の数十万円…本当に高かった…。その後、社会人になって、ちゃんと分割して返しました。

芝山 そういうところがすごく親近感ありましたね。あと、もう1個、阿部さん、ちっちゃい頃から自分と話すのうまいなって思ったんですよ。将棋やり出して、あ、いいなと思ったけど、なんかちょっとちゃうなって思って、やめるんですよ。僕はなんとなく、ああいう時にちょっと自分の心を偽って、自分の場所ができたらいようかなって思うんだけど、阿部さんはすごい自分自身と喋って、お前どう思ってんねん、この場所は違うと思ってんねんな? じゃあやめとこうって、それがすごいなって思って。

阿部 そこに関して言うと、10代の頃の思い出は、RPGのセーブポイントみたいになっていて、その時に戻って、あの時、実はこう思ってたんじゃないかなというのを、解釈し続けてる感じはやっぱりあります。後からわかる気持ちも結構あるんですよね。あの時の自分はこう思っていたんだなという気持ちを引き出してきて書きました。

芝山 なるほど、後からわかったこともあると。

阿部 本の中にも書いたエピソードで、コピーが全然うまく書けなかった時に「お前はもっと人を傷つけた方がいい」と上司に言われたことがあったんですね。言われた時は、「え?!」と真意をつかみかねたけど、解釈することで、あの人は目の前にいる若者に、人の心をつかむとはどういうことなのか、その意味に気づいてもらいたくてそういう伝え方をしたのかな、と。こんな風に後からわかることがあるんですよね。<中編に続く>