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1人でこなせる仕事量に限りがある中で確実に成果を出すためには、「何をするか」でなく「何をしないか」を見極めるべきだ。内田和成の『論点思考』(東洋経済新報社)から、論点を上手く設定するために必要な視点の変え方を学ぶ。

※本稿は、内田和成『論点思考』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。

視野・視座・視点の三要素で論点思考を高める

 論点思考を高める上で大事なことは、「与えられた課題に疑問をもつ」に代表されるような、つねに違った視点でものを見たり、考えたりする癖をつけることである。しかし、視点を変えてものを見ることはたやすいことではない。

 そこで私は視点以外に視野と視座を加えた三要素を大事にするようにしている。なぜなら、三要素のうち視野と視座はすぐにでも訓練できるし、成果もあげやすいからである。

視野─普段あまり見ていない方向に眼を向ける

 視野が広いといえば、自分の眼をいつも見ている方向だけではなく、三六〇度の視野でものを見ることができる人のことをいう。論点思考で大事なことは、つねに広い視野でものを見ることで、これまで見過ごしていたものに注意を払うことである

 ついつい目の前の事象や論点にとらわれがちなのを、後ろから見たり、横から見てみたりすることで新しい論点が浮かび上がってくる。

 例えばある企業でコスト削減のプロジェクトをやっているときに、これまでもやってきたことではあるが、原材料調達費の削減、部品の共有化、品種の削減などをあらためて検討していた。しかし、どうしても解が見つからない。

 そこで、違った見方をしてみようということになり、そもそものコスト構造がどうなっているのかという原点に返って、調べてみた結果、そのメーカーの生産規模では生き残りが不可能なことが判明した。要するに個別の要素コストをいくら下げても、全体としてのスケールメリットのほうが効くために、コスト競争力がつかないことがはっきりしたのである。

 この場合は普段着目している部品単品のコスト削減や製品の単価を下げるのではなく、総コストという見方をした結果、真の論点が浮かび上がってきたわけである。

 蛇足ではあるが、論点がわかれば、まったく新しい製造方法を考えるとか、M&Aで必要な規模を確保するとか、具体的な解決策は比較的簡単に出てくる。もちろん、実行は容易ではないが、議論はすっきりするわけである。

 では、こうした視野を広げた見方をするためにはどうしたらよいであろうか。