一つは普段あまり気にしていないことに注意を向けてみることである。例えば商品開発力に定評のある企業であれば、逆に生産現場や営業現場の視点でものを見てみる。あるいは国内中心の企業であれば、海外市場や海外の競争相手に目を向けるなどもあるだろう。

 もちろん個人の立場で考えることも可能だ。営業の人間であれば普段は顧客や流通など、自分の売り先のことばかり考えているわけであるが、逆に社内の事務部門や開発・生産部門に目を向けることで違った視点が生まれてくることが多い。

 もう一つは、相手の靴を履いてみる方法である。自分が相手だったら、この問題はどう考えるかととらえ直すことで違った見方ができることも多い。

視座―二つ上のポジションに就いているつもりで仕事をする

 視座とは、物事を見る姿勢や立場のことだ。平たくいえば、より高い目線で物事を見ることをいう。高い目線とは、役職の高さもあれば、鳥の眼的な高さもある。

 例えば、私は自分が教えているビジネススクールの学生たちに、つねに実際の自分よりも二つ上のポジションに就いているつもりで仕事をするようにといっている。一つ上ではない。平社員ならば係長ではなく課長、課長ならば部長ではなく本部長、平の取締役であれば常務ではなく社長の立場でものを考える。

 一つだけ上のポジションから見ようとすると自分自身のことと関連づけて物事を見てしまう、あるいはどうしても自分の利害が絡む。二つ上から見ようとすると、自分の立場を離れて考えることができる。二つ上の立場でものを考えることによって、自分のいま抱えている課題すなわち論点がより明確に浮かび上がってくるものだ。

 あなたが九州の営業所の営業マンだとしよう。取引先からある大きな商談が舞い込み、意気揚々と出かけると、取引成立の条件は大幅な値引きだともちかけられたとしよう。この条件は、本社の決めた価格ガイドラインをさらに一割近く割り込む到底承認の下りそうもない価格だ。

 さて、あなたはこの問題をどうとらえるだろう。自分の問題としてとらえれば、もちろん価格を下げて条件をのみこの商談をぜひ成功させたい。これが決まれば、今期の営業ノルマ達成は間違いない。したがって、いかに値引き額を最小にしてこの商談を成功させるかが論点となる。