視点―切り口を変えてみる

 視点とは着眼点、目のつけどころである。別の言い方をすれば、ものを見るときにどんなメガネをかけてものを見るかであり、あるいは自分がどんなパラダイムに準拠してものを見ているかにほかならない。人は誰でも事象を見るときに、知らず知らずのうちに決まった視点で見ている。つまり、自分なりのものの見方をしてしまう。自分なりというくらいだから、人によって違う。すなわち視点は人によって違う。陥りやすいのは、誰でも自分の視点に固執しがちで、あるパターンにはまりやすいということだ。

(中略)

書影『論点思考』『論点思考』(東洋経済新報社)
内田和成 著

 BCGでは「切り口を変えてみよう」という。これは視点を変えることだ。例えば、徹底的にコスト分析をやったが、どうにも答えが出ない、説明がつかないという場合に、「視点を変えてみよう」「切り口を変えてみよう」というのは、「コスト以外の要素で見てみないか」ということだ。具体的にいうと、ブランドという視点で見てみようとか、プロセスを見てみようとか、サービス面でスポットを当ててみようという発想になる。そういうものを「切り口を変える」という。

 新しい発想を生み出したり、人にはないものの見方をする視点というものは、センスが必要で、訓練すれば身につくという類いのものではない。しかし、視野を広げ、視座を高める努力を続けていくことで、経験が蓄積され、結果として新しいものの見方や発想を生み出す視点が磨かれていく。