ハーバード大教授が「人脈づくり」の秘訣を伝授、学生にも勧める具体的手法とは佐藤智恵氏

  日本の伝統的な文化そのものをアメリカ流に変えようとしてもうまくいかないと思います。むしろ、リスクをとりたがらない人が多くいることを前提に、政府が個人の経済的リスクをできる限り軽減する仕組みや制度を提供することが必要でしょう。

 人々が新しい仕事にチャレンジするにはリスキリングが不可欠です。そしてリスキリングには時間がかかります。人々が学び直しをしている期間、社会保険給付や失業手当により、一定の所得が保障されるような仕組みを整備していくことが大切だと思います。

佐藤 日本企業の社員の中にも、転職して新たなキャリアに挑戦したい、あるいは、社内で別の仕事に挑戦したいと思っている人は多いと思います。どのようなリスキリングを実施することを推奨しますか。

ブルックス 私のようにキャリアを中断して、大学・大学院で学ぶのも一案ですし、インターン制度や副業制度を利用して実際に働いてみるのもよいでしょう。

 また知識を身につけたり、就業体験をしたりするのと同じぐらい重要なのが人脈形成です。私が特にハーバードビジネススクールの学生に勧めているのが、転職前、あるいは、転職直後に、意識して人脈を広げ、自分専用のアドバイザリーボードをつくっておくことです。これは私が大学教員からアメリカンエンタープライズ研究所(AEI)の所長に転職した際に、とても役にたった手法です。

 当時、転職したばかりの私に最も不足していたのは経営経験でした。そこで、私がまず行ったのは、できるだけ多くのシンクタンクのトップと知り合いになり、助言をもらうことでした。昼食をとりながら、あわせて10人ぐらいに話を聞いたと思います。