そして、先ほどの(3)(4)は住居関連費用の話だ。

 持ち家の場合、内装や設備などハード面のクオリティーが賃貸より高い。そもそもの物件の特性に加えて、自分で住む家には良質なものを選びたいという心理が働き、内装・設備はさらに充実する。

 だが、もしあなたが賃貸オーナーだったら、どうだろう?

 少ない投資で多くの利益を得るために、なるべくコストを下げて費用負担を減らしたいと考えるのが通常ではないだろうか。

 このため、賃貸物件の内装や設備は、安普請なものとなりやすい。

 税金に関しても、実は持ち家と賃貸では「所有者の負担額」が2倍程度違う。負担が低いのは、もちろん持ち家である。消費者が持ち家を取得しやすいよう、国が促進税制を設けて負担を軽減しているからだ。

 その状況下で、着実に利益を得たい賃貸オーナーは、設備費や税金などの負担額を家賃に上乗せする。

 入居者の目線では「設備費や税金などの負担が少ない」と思えるかもしれないが、実質的には入居者が負担しているのと同じなのだ。

持ち家と賃貸の「生涯コスト」は
本当に「ほぼ同じ」!?

 ここからは、(2)の解説で触れた「生涯住居費(生涯コスト)」の話を深掘りしていこう。

 持ち家と賃貸の生涯コストは、一生同じ家に住むと仮定した場合の支払い期間によって決まる。そして、住宅ローンは基本的に35年で払い終わるが、家賃は一生払い続けなければならない。

 大学卒業後に社会に出た男性が、入社と同時に家を買ったとすると、住宅ローンは35年後の60歳前後に完済する。

 一方、この男性が入社と同時に家を借り、平均寿命の81.47歳頃まで生きたとすると、60年ほど家賃の支払いを続けなければならない。

 両者を比較すると、家賃を払う期間の方が単純計算で約1.7倍長い。その分、コストがかかり続ける。

 にもかかわらず、「持ち家と賃貸の生涯コストはほぼ同じ」という記事や意見をよく見聞きする。これは、おそらく“大人の事情”だろう。

 例えば、賃貸住宅を扱っている物件検索サイトが「持ち家の方が圧倒的に有利」というコラムを載せてしまうと、取引先の賃貸事業者を全員敵に回すことになる。