Z世代の恋愛の多くが
Instagramから始まる理由
先述のSHIBUYA109 lab.の調査で「現在の恋人の有無」の問いに対して「現在付き合っている」と回答した人は、20.0%だった。Z世代は、どこで恋人となる対象と出会っているのだろうか。
「我々の行った調査では、Instagramから恋愛に発展した経験のある人が5人に1人いるという結果となりました。一方、マッチングアプリで出会ったという人は3.5%と、かなり低い割合です。Z世代は自分のコミュニティで、『マッチングアプリを使っていること』がバレたくないと考えていて、新しい出会いを『友達の友達』という安全圏の中で見つけていく傾向にあるようです」
Z世代のコミュニケーションツールの中心は、Instagramだ。遊ぶ予定を友人と計画するときもInstagramのDM(ダイレクトメッセージ)でやりとりを行い、初対面の人とまず交換するのはInstagramのアカウントだという。
Instagramのホーム画面ではそのアカウントの所有者の“世界観”が垣間見えるため、Instagramから始まる出会いは「一般的なマッチングアプリで出会うより安全」と考えているZ世代が多いそうだ。
「Z世代のほとんどは、写真や動画を用いたコミュニケーションを日常的に行っています。視覚的な情報を処理する能力にたけているため、顔や性格というよりその人の持つ“世界観”で好悪を判断しているのです」
Z世代は、モノトーンやフレンチガーリー、量産系など、それぞれに異なるInstagramの世界観から、その人物とのマッチ度を判定しているという。
「同じ世界観が好きな人は性格や趣味が一致することも多く、特定の人物との距離感を測る判断軸として“世界観”が有効だ、というのがZ世代の共通認識になっているようです。『友達の友達のアカウント』が好きな世界観だったから、仲良くなって恋愛に発展したという話もよく聞きます」
SHIBUYA109 lab.の調査で「好きな人へのアプローチ方法としてやったことがあるものを教えて下さい」(複数回答)という問いに対して「アプローチは特にしたことがない」(38.3%)が最多回答だった。
リスクの少ないコミュニティー圏から、徐々に交際範囲を広げて、気が合えば自然と交際に発展するという流れが多いようだ。実際に「大学時代に付き合った子と結婚する人がすごく増えている」と長田氏は話す。
Z世代にとって、恋愛は必ずすべきものではなく、数多ある選択肢の一つ。彼ら彼女らは、恋愛することが幸せだと押し付けられることなく、「個々の幸せ」が尊重される社会を望んでいるようだ。
長田麻衣(おさだ・まい)
総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て、2017年に株式会社SHIBUYA109エンタテイメントに入社。SHIBUYA109マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人の「around20」と接する毎日を過ごしている。初の著書『若者の「生の声」から創る SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)を2023年3月31日に出版。