「第三者」の声の重要性を理解していない

 また、(2)の「外部の専門家による再発防止特別チーム」というのも、一般的な企業がやれば炎上してしまう可能性が高い。「調査結果を外部に公表しない専門家」は、もはや「内部の人」だからだ。

 なぜこの手の問題が起きた際に「第三者委員会」という話になるのかというと、調査結果を外部に公表をするからだ。あまりに企業寄りで、その会社をかばうような内容だったら、「あの専門家、ズブズブじゃないか」と批判される。つまり、外部の専門家は「社会の目」にさらされることで、はじめて公正なチェックが期待できるのだ。

 今回は調査結果が公表されないので、そのあたりは期待できない。しかも、人選もビミョーだ。

 チームの指揮を取るのは、元検事総長の林真琴氏ということだが、実は林氏はジャニーズ事務所の顧問弁護士を長く務めている元東京地検特捜部の矢田次男氏の後輩にあたり、ともにリクルート事件を担当していたという「縁」もある。

 こういう関係性のある人が指揮をとるチームで、独立性・公正性を確保できるのかというのは疑問だが、今のところマスコミからは、そういう話は出ていない。

 そして、(3)の「社外取締役の就任による経営改革」は論じる必要もないほど、本件には意味がない。これまでさまざまな企業不祥事が起きてきたが、社外取締役のチェックによって問題が発覚したなんてケースはほとんどない。

 危機発覚後の対応も然りで、なぜ30年近くもの間、創業者の連続性犯罪が黙認されたのか。保護者のもとから少年たちを預かっている立場であるはずのジャニーズ事務所で、なぜ「被害」の声が握りつぶされたのか。「文春」報道を経て2002年に裁判で事実認定された後も、なぜ社内で「タブー化」されていたのか。

 これらの「組織の病」は、第三者の視点で徹底的に調査をして、「病巣」を突き止めない限りは「治療」できない。

 今回、社外取締役に就任する人たちがどうこうという話でもないし、侍ジャパンのコーチングがよろしくないとかそういう話ではない。最近では女優やアナウンサーも就任するように、社外取締役は基本「お客様」の立場なので、残念ながら、組織の深い闇にメスを入れることはできない、と申し上げているのだ。