国内の電力大手トップクラスに業績面で比肩するJERAの給与水準は、東京電力ホールディングス、関西電力を超え、業界トップの中部電力に迫る。だが、グローバル総合エネルギー会社への脱皮を目指すJERAの報酬は現状にとどまらない。特集『時価総額2兆円!? 上場前夜「JERA」大解剖』(全8回)の#6では、保守的な電力業界で異色ともいえる、報酬増につながる「ある人事秘策」をレポートする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
JERA平均年収は850万円
大手電力1位中部電に肉薄
東京電力ホールディングス(HD)と中部電力が折半出資して2015年に発足したJERA(ジェラ)。JERAは急速に成長を遂げ、燃料の上流開発、燃料トレーディング、火力発電、再生可能エネルギーなど、その事業は多岐にわたる。
電力会社のリソースを持ち寄って走り始めたJERAだが、そのビジネスモデルは今や「商社に近い」といわれる。
JERAは20年に有価証券報告書で社員の平均年間給与を初めて明らかにした。それ以降、毎年その水準を引き上げてきた。
22年3月期時点では850万円。これは大手電力会社ではトップの中部電力(同期で857万円)に次ぐ水準だ。
しかしこれでも、「待遇が理由で転職する社員が一部いる」とJERA関係者はぼやく。あるいは「JERAでの仕事は魅力的だが公表されている報酬水準ではちょっと……」。そう苦笑いする大手コンサルティング会社の社員もいる。
JERA社員の転職先の一つに、ビジネスモデルが近い大手商社がある。大手商社の平均年間給与はJERAの倍近くだ。報酬が全てではないが、これほどの格差があれば心は揺さぶられるだろう。
この“格差”に対し、「電力会社とは違うカルチャーの会社をつくる」(奥田久栄社長CEO〈最高経営責任者〉兼COO〈最高執行責任者〉)と言ってはばからないJERAが、手を打たないわけがない。
実は、JERAは報酬水準で電力大手との横並びから脱するための「ある人事秘策」を用意している。その秘策が実行されれば、管理職の報酬は来年度以降、大幅に上昇していく可能性がある。次ページでは、報酬増に向けJERAで進む人事制度改革の詳細を明らかにする。