5月、JERAはNTTアノードエナジーとタッグを組み、国内の有力な再生可能エネルギー会社グリーンパワーインベストメント(GPI)を3000億円規模で買収すると発表した。通信業界のガリバー、NTTグループと組んだのはなぜか。エネルギーのグローバルメジャー入りを目指すJERAの再エネ戦略は国内に閉ざされていない。特集『時価総額2兆円!? 上場前夜「JERA」大解剖』(全8回)の最終回では、JERAの再エネ戦略の目玉、洋上風力事業のかじ取りを任されている外国人トップを直撃。JERAがグローバルで描く再エネ戦略の絵を披露してもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
ベルギー洋上風力会社を巨額買収
JERAの「再エネの本気度」世界に発信
――3月に、ベルギーの洋上風力会社パークウィンドを約2200億円で買収すると発表しました。
あの日は発表後、丸1日、競合他社の知人らからの電話が鳴りやまず、相手をしていました。「どういった野心をJERAは持っているんだ」「何か特定の市場で協力できないか」と。
市場の多くの人たち、特に欧州の洋上風力の関係者はびっくりしたようです。多くの人はJERAを知らなかった。で、JERAという会社が、これだけの野心を持っていることに気付き始めました。
パークウィンドは世界の洋上風力の分野で、独立したプラットフォームとして残っていた数少ない会社の一つでした。JERAと相性も良かったし、JERAの存在を知らしめるのに重要だったのではないかと思います。
実際、買収プロセスにおいては、いわゆるメジャープレーヤーが競合でした。パークウィンドとそのオーナーが「買収後にJERAだったら機能していく、大丈夫だ」と、われわれのビジョンやバリューを見て考えたと聞いています。オーナーにとっては他のオプションもあったけど、「JERAに大変プロフェッショナリズムがあって感銘を受けた」とも聞いています。
――パークウィンドも、ナタリーさんが以前CEO(最高経営責任者)を務めた洋上風力の会社もベルギー所在ですが、パークウィンドに個人的な人脈があったのですか? JERA幹部からは「ナタリーさんがいたから買収できた」との賞賛の声を聞きましたが。
パークウィンドの人を知っていたのは事実です。ある意味で翻訳者のような役割はしたかもしれませんが、私個人のことよりも、ずっと大きなことが買収できた背景にあります。パークウィンドとJERAにはカルチャーの一致がありました。双方のチーム、そしてオーナーでいろいろなやりとりがありましたが、社風、仕事のやり方、事業のやり方などで、非常にマッチしたのです。
――パークウィンドの強みは何でしょうか。
人です。経験豊かな人材。彼らは洋上風力においてのパイオニアだったわけで、大変な能力を持っています。それがJERAにとって補完的なものでした。彼らは既にプロジェクトを持っていますし、そしてO&M(オペレーション&メンテナンス)の分野でも仕事ができています。
――パークウィンド買収発表から間を空けず、5月にはNTTグループの電力事業会社、NTTアノードエナジーと出資比率4:1(NTTアノード4、JERA1)で日本の再生可能エネルギー会社、グリーンパワーインベストメント(GPI)を3000億円規模で買収すると発表しました。通信ガリバーとエネルギー大手の異色タッグです。