上場前夜「JERA」大解剖#3Photo by Masataka Tsuchimoto

4月、JERAの会長グローバルCEOに東京電力ホールディングス出身の可児行夫氏が就任した。出身母体からも「異端」と評される可児氏は「JERAは電力会社ではない」と言ってはばからない。特集『時価総額2兆円!? 上場前夜「JERA」大解剖』(全8回)の#3では、JERAのかじ取りを担う可児氏を直撃。共同CEO体制で共にJERAを率いる奥田久栄社長の評に加え、JERAのエネルギー会社としての「3本柱」の中身、再生可能エネルギー戦略まで余すところなく語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

2019年から事業領域が拡大し
「もう1人共同CEO要るくらい」

――大手企業では珍しい共同CEO(最高経営責任者)体制となりました。

 完全に統合を果たした2019年から4年たちましたが、良い意味で事業の領域が広がりました(ダイヤモンド編集部注:東京電力ホールディングスと中部電力の合弁会社であるJERAは15年に発足したが、両社の一部部門を切り出して燃料上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売までのバリューチェーンを確立したのは19年)。

 再生可能エネルギー、水素・アンモニアのバリューチェーン構築などの「事業開発」と燃料トレーディングなどの「最適化」、火力発電所などの「O&M・エンジニアリング」の三つの分野がそれぞれで成長し、非常に広がりがあります。こうしたビジネスモデルは、アジアではたぶん初めてでしょう。

 一方で、JERAは経営者と現場が近い。だから判断もクイックにできます。領域が広くなったので、経営者は結構大変なんですよ。見る範囲が広い上に、深く見ないといけなくなるから。

 そうなると、今の段階では、共同CEO体制は非常に適していると思います。「もしかしてもう1人要る?」なんて奥田(久栄社長)とも話しています(笑)。2人だから、なんとかなっている感じです。

 共同CEO体制がこの後もこれでいいのか。それはまさにこれからの議論です。本当にワークするならばこのまま続ければいいですし。

 私のポジションは、チェアマン・オブ・ザ・ボード。これは会長。会社経営者の仕事には監督と執行があるのですが、監督のトップです。しかもグローバルCEOなので、執行のトップでもあります。

 監督と執行、両方のトップとなるガバナンスのモデルは、米国型でしょう。米国企業のトップの名刺を見ると、私と同じチェアマン&グローバルCEOが多い。英国など欧州に行くと、会長とCEOは別の人が務めることが多いです。

 最終的に、どちらのモデルがいいのかはよく考えないといけません。

 私がこの会社に来たのは16年です。就任のあいさつで「電力会社とは違う。お互いは『さん付け』で呼びましょう」と言いました。極力上下をつくらないように(呼称に)役職名を付けるのはやめてください、と。これは着任以来今でも徹底していることです。

――可児会長から見て、中部電出身の奥田社長はどんな人でしょうか。