上場前夜「JERA」大解剖#4Photo by Masataka Tsuchimoto

4月、JERAで異例の共同CEO(最高経営責任者)体制が発足した。社長CEO兼COO(最高執行責任者)に就任したのは、中部電力出身の奥田久栄氏だ。中部電出身者が執行トップを務めてきた慣例とは異なる共同CEO体制は、株主の中部電が同じく株主の東京電力ホールディングスに「押し戻された」ようにも見える。しかし、奥田氏は「この体制がベスト」と言い切る。なぜか。特集『時価総額2兆円!? 上場前夜「JERA」大解剖』(全8回)の#4では、ダイヤモンド編集部のインタビューに応じた奥田氏が異例の経営体制のアドバンテージを明らかにするほか、JERAの液化天然ガス(LNG)事業や脱炭素戦略が持つ強みを解説する。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

増資の判断は2025年度の
目標達成が見えた頃

――JERAは東京電力ホールディングスと中部電力の合弁の非上場会社ですが、IPO(新規株式公開)が視野に入ってきました。

 2025年度で純利益2000億円(燃料費調整の期ずれ影響を除く)を稼ぐビジネスモデルを目標にしています。そのめどが付いたら次の成長戦略を考えていきます。

 議論はもう始めていますが、次の成長戦略には当然、これまで言ってきた水素、アンモニア、再生可能エネルギーの次の展開も入ってきます。さらに、デジタルプラットフォームも入ります。これらを作り上げていくのに相当な規模の投資が必要です。

 しかし、JERAは投資ばかりをする会社ではありません。投資したけれど戦略に合わなかったものは売却するなど、事業を入れ替えながらさらに新しいものに投資していく。そういう事業計画を作っていきます。

 おのずとBS(バランスシート、貸借対照表)が膨らむのか、縮むのか、今のままなのかというのが見えてきます。僕らがやりたい投資、そのときに抱えるリスクが明確になってくると、BSの右側の自己資本をどこまで厚くするのか、薄くするのか、今のままでいいのかの答えが出てきます。

 25年度まであと3年になり、だんだん見えてきますから。僕らの実力ってこれぐらいだよねというのが、今年度の収支を分析する中である程度出てくるのではないかという予感はします。ただ、これだけ市場が大混乱期なので、予測は出にくいといえば出にくいですが。

――世界はエネルギー市場も金融市場も混乱しています。JERAが新規上場するかもしれない25年度ごろは、地合いが悪いという見方もあります。