■ワースト1:「要望をストレートに伝え過ぎている」

 そして、うっかりやってしまう人が最も多く、信頼関係を損ねている伝え方のワースト1が「要望をストレートに伝え過ぎている」です。

 例えば、「この仕事、急ぎで仕上げて!」などと部下に指示することはありませんか? 自分の手が回らず、急ぎで手伝ってほしいあまりこのようにストレートに伝えてしまうケースがあるかと思いますが、部下も仕事を抱えています。自身の計画に沿って業務をこなしているのに、いきなりこのように業務を振られては予定が狂いますし、「上司はこちらの事情を汲もうともしない」と不信感につながってしまいます。

 では、何と伝えればいいのか。ぜひこのように言ってみてください。

「急ぎだけれど重要な、鈴木君にしか頼めない案件があるんだ。18時までにお願いするのは可能かな?」

 この「鈴木君にしか」という部分は、伝え方の技術「あなた限定」を使っています。人は「あなたにしか頼めない」と言われると嬉しくなり、要望を前向きに受け入れようとします。この場合も、「自分にしかできない重要な仕事であれば、急ぎでもなんとかしよう」と思ってもらいやすくなります。

 具体的に「18時まで」と伝えるのもポイント。「とにかく急ぎで」と言われるよりも、具体的な目標を提示してもらえた方が、「そこまでに頑張ろう!」という気持ちになりやすいのです。

 ほかにも、こんな残念な要望の伝え方をしている人がいます。

「電話ではなく、メールでいただけますか?」

 社歴の長いベテラン層では、時間がかかるメールよりも電話でぱっと伝え、即反応をもらいたいという人のほうが多いと思いますが、若者層では電話で話すことにストレスを感じる人が一定数います。目の前の業務に集中しているのに、いきなりの電話で中断させられることを嫌がる人もいるようです。

 そんなとき、上司やクライアントなどに「電話ではなく、メールでいただけますか?」と言ってしまう人がいますが、相手によっては「要件をぱぱっと伝えたいだけなのに、融通の利かない人だな」「面倒くさいからこの人ではなく、他の人にお願いしようかな」などと思われてしまう恐れがあります。

 これも、伝え方ひとつで相手に与える印象を劇的に変えることができます。

「高橋さんの案件だけは優先して対応したいので、出られないことがある電話ではなく、確実で迅速にお返事できるメールかLINEでいただけますか?」

 この「高橋さんの案件だけは」は、伝え方の技術「あなた限定」あなたは特別だよと言われると、ちょっとハードルが高いことでも対応しようという気持ちになります。

 そして、ここではメールかLINEという2つの選択肢を提示する、「選択の自由」という技術も使っています。人はAかBかどちらがいいかと問われると、どちらかを選びたくなるものです。メールかLINE、どちらだったらいいかな…と検討してもらいやすくなります。

 こちらとしては、電話でなければ、メールでもLINEでもどちらでもいいわけです。こちらが都合のいい方法を2つ並べれば、どちらかを自主的に、かつ気持ちよく選んでもらえます。

 そして、とてもシンプルながらすぐに使える技術としてぜひ知っておいてほしいのが、「感謝の言葉を添える」こと。

 例えば、会議の前に部下に「この机、移動しておいて」というときに、「ありがとう」のひと言を付けてあげてください。「この机、移動しておいてくれる? ありがとうね!」―― これだけで、「雑用ばかり振ってくる嫌な上司」から、「気遣いのあるいい上司」へと印象がガラリと変わります。

 今回ご紹介した伝え方は、どれも技術を使い、ちょっと工夫するだけでできるものです。伝え方のせいで、思いが伝わらず誤解されてしまうのはもったいないこと。上司や部下、クライアントなどとのコミュニケーションに課題感を覚えている人は、ぜひ伝え方の技術をうまく取り入れてほしいですね。

 特に「サプライズ法」「感謝」は、普段の言葉にサプライズワードや感謝の言葉を付け加えるだけなので、誰でも簡単にできるはず。それだけで、相手に与える印象は一気に好転するので、ぜひ試してみてください。

【絶対NG!】伝え方が残念過ぎる人の特徴【ワースト3】佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasaki