パフォーマンスを決めるのは「買い手」
しかも、買い手が商品に求める属性には、さまざまな種類があるのがふつうです。たとえば、軽自動車を求めている買い手であれば、「燃費のよさ」「運転しやすさ」「車内の快適さ」……などに注目しているでしょう。これらのAttributeは決して横並びではなく、それぞれをどれくらい重視するかによってウエイトづけがなされています。
そして、それぞれのAttributeに関して、買い手は一定水準のPropertyを求めています。「燃費は少なくとも20km/Lくらいであってほしいな」とか「これくらい小回りがきいてほしいな」という具合です。買い手は、いわばそれぞれの項目の点数を足し上げることによって、その商品の価値を見極めて「払ってもいい金額」を決めています。
ここからわかるとおり、商品のパフォーマンス(価値)を決めるのは、あくまで買い手です。売り手(商品提供側)がそれを決めるのではないのです。
気をつけなければならないのは、Propertyの値が2倍になったからと言って、商品のパフォーマンス(それに払っていい金額)が2倍になるとはかぎらないということです。価値の大きさは、どこまでも買い手の主観に依存しており、買い手の認識をもとに判断されるものだからです。ですから逆に、Propertyが2倍になることで、パフォーマンスが5倍に跳ね上がるようなこともあるでしょう。
たとえば、かつては携帯電話のカメラ機能において「画素数」というAttributeがクローズアップされていた時代がありました。しかし、最近はテレビCMでも画素数の情報をもとに訴求していることはまずありません。これ以上画素を増やしても、多くの買い手にとってはパフォーマンス向上につながらないところまで技術が進歩してしまっているからでしょう。
オオクワガタブームの際に耳にした話ですが、クワガタマニアのあいだでは、オオクワガタはサイズが大きいほど価値が高いとされるそうです。全長8センチまでは「1センチあたり1万円」であるのに対し、8センチを超えたところからは「1ミリあたり1万円」という相場になるのだとか。正確なところは詳しい人に聞いていただければと思いますが、これもまたPropertyの伸びがパフォーマンスの伸びと正比例しないケースだと言えるでしょう。