トレンドが激しく移り変わるいま、時代に左右されない「モノが売れる原理」が必要とされている。そんなマーケティングの「そもそも論」を徹底的に掘り下げたのが、博報堂やボストン コンサルティング グループで活躍してきた津田久資氏による最新刊『新マーケティング原論』だ。
「マーケティングを科学する第一歩」(冨山和彦氏)、「これこそ『クリティカルに考える』ということ」(デービッド・アトキンソン氏)など各氏の称賛を集める同書では、4Pや3C、ブルーオーシャン戦略や破壊的イノベーション戦略など、おなじみのツールや理論が「そもそもなぜ有効なのか?」という部分も含めて、きわめてわかりやすく解説されている。まさに「考えるマーケター」のための教科書だ。
本稿では、同書より一部を抜粋・編集し、「コストパフォーマンスにおける『パフォーマンス』とはなんなのか?」について考えていく。
商品の価値は「属性」から生まれる
買い手がある商品を実際に購入するかどうかは、その商品の「コストパフォーマンス(PC)」に左右されます。つまり、一定コストあたりにどれくらいのパフォーマンスが期待できるかが、判断の軸となるわけです。今回はこのPCの決定要因の一つである「パフォーマンス」とはなんなのかということを考えてみましょう。
パフォーマンスとは、その商品が持つ「属性」によって生み出される「効能の価値」の総量であり、買い手がその価値に対して支払ってもいい「金額」として表されます。これだけだとわかりづらいと思いますので、もう少し噛み砕いていきます。
商品はさまざまな性質を持っています。日本語だと属性ですが、英語では大きく2種類に分けられます。まず、自動車の「最高速度」「燃費」「ボディカラー」「車内の快適さ」といった属性項目はAttributeと言われます。これに対して、それぞれのAttributeが持つ「値」のほうはPropertyと呼ばれます。たとえば「最高速度」というAttributeに対して、「200km/h」とか「150km/h」というPropertyがあるという具合です。
すぐれたマーケターは、買い手が求めている属性をうまく分解したり翻訳したりしています。たとえば自動車の場合、「車内の快適さ」というAttributeは、「車内空間の広さ」「シートの座り心地」「車内温度」などのより小さなAttributeに分解できます。また、ワインの「万人受けする飲みごたえ」のようなあいまいな属性も「アルコール度数13.5~15%」や「ポリフェノール含有量500mg/100ml」といったPropertyに翻訳することで、よりパフォーマンスの高い商品を実現できるようになります。
ここで重要なのは、商品が同じであっても、買い手が異なればその商品のパフォーマンスも違ってくるということです。なぜこうしたことが起きるかと言えば、それは買い手によって、求めている属性がバラバラだからです。
車で言えば「燃費」というAttributeに大きなウエイトを置いている買い手もいれば、どうしても「車内空間の広さ」のほうにこだわりたい買い手もいるでしょう。重視するポイントが違えば、その車に感じる価値も違ってきます。