トレンドが激しく移り変わるいま、時代に左右されない「モノが売れる原理」が必要とされている。そんなマーケティングの「そもそも論」を徹底的に掘り下げたのが、博報堂やボストン コンサルティング グループで活躍してきた津田久資氏による最新刊『新マーケティング原論』だ。
「マーケティングを科学する第一歩」(冨山和彦氏)、「これこそ『クリティカルに考える』ということ」(デービッド・アトキンソン氏)など各氏の称賛を集める同書では、4Pや3C、ブルーオーシャン戦略や破壊的イノベーション戦略など、おなじみのツールや理論が「そもそもなぜ有効なのか?」という部分も含めて、きわめてわかりやすく解説されている。まさに「考えるマーケター」のための教科書だ。
本稿では、同書より一部を抜粋・編集し、「商品のコストパフォーマンスを高める2つの方法」をご紹介する。

商品のコストパフォーマンスを高める2つの方法Photo: Adobe Stock

コストを下げる──CPを高める方法①

 人がなんらかの商品を「買おう!」とするためには、「①『手に入れてもいい』のライン」「②『買える』のライン」「③『買ってもいい』のライン」という3つの条件をクリアする必要がある、という話をしてきました。

 ※参考記事:
【マーケターが教える】人が「買う!」と決めるまでには「3つのハードル」がある

 このうち、いちばん大事なのは、最終的に商品が「CP(コストパフォーマンス)ライン」すなわち「買ってもいい」のラインを超えているということでした。

 では、このラインを上回るよう、商品のCPを高めるには、どんなことが必要でしょうか? CPは「パフォーマンス÷コスト」の商ですから、CPを高めるには2通りの方法が考えられます。

 ①コストを小さくする
 ②パフォーマンスを大きくする

 まず、分母であるコストを小さくする方法です。
 コストを下げるためには「価格コストを下げる」「商品の効能を享受するまでにかかるコストを減らす(=到達コストを下げる)」のどちらかが必要です。

 ただし、多くの場合、よりウエイトが大きいのは価格コストのほうでしょう。逆に、到達コストの低減がCPに作用し、買い手の意思決定に影響してくるのは、価格コストやパフォーマンスといったその他の条件がほとんど同じ場合です。

 この視点で見ると、アマゾンなどのECサイトの成功はここにあると言えるでしょう。
 とりわけ流通業においては、競合が取り扱っている商品と自社が取り扱っている商品に、大きな差がありません。変えられる部分と言えば、到達コストくらいです。アマゾンは、わざわざ買い物に出かけて製品を持ち帰るコスト(買い手の到達コスト)を減らすことで、商品のCPを高めたと見ることができるわけです。