パフォーマンスを上げる──CPを高める方法②
では、分子であるパフォーマンスを大きくして、CPを高めるにはどうすればいいでしょうか?
商品のパフォーマンスは「(機能性パフォーマンス+情緒性パフォーマンス)×効能を享受するまでにかかる時間の短さ」で決まりますから、パフォーマンスを大きくするには、次のいずれかの方法があります。
①機能性パフォーマンスを高める
②情緒性パフォーマンスを高める
③効能を享受するまでにかかる時間を短くする
アマゾンはこの③においても勝者だと言えます。
巨大な倉庫や流通管理システム、さらにはマーケットプレイスでの出品といった仕組みを導入することで、商品の欠品を防ぎ、さらには「当日お急ぎ便」のようなサービスを提供しました。これは、商品が手に入るまでの時間を短縮することで、商品のパフォーマンスを高めるための施策だと言えます。
他方、商品の価値として、多くの人が考えるのが①の機能性パフォーマンスでしょう。
たとえば軽自動車の場合であれば、ひと口に機能と言っても、「燃費のよさ」「車内空間の広さ」「ステアリングのよさ」などさまざまなものが含まれます。しかし、価値の高い商品をつくろうとするとき、われわれはよく、1つの機能的な価値の軸(Attribute)だけにとらわれてしまいがちです。たとえば、「燃費」軸における競争だけにとらわれ、競合他社よりもいかに燃費のいい軽自動車をつくるかばかりを考えてしまうようなケースです。
また、もう1つ陥りがちなのが、機能性パフォーマンスばかりを追い求めてしまい、その商品が持っている情緒性パフォーマンスを軽視してしまうという失敗です。
たとえば、従来のトラクターでは「畑を耕す」という機能性パフォーマンスが重んじられてきましたが、ヤンマーは「乗っているとカッコいい」という情緒性パフォーマンスを提供して、商品のCPを高めることに成功しました。これは、ブランド戦略の大家であるデイヴィット・アーカー教授の言う「自己表現価値」の典型だとも言えるでしょう。競合他社がトラクターに発見できないでいた「嗜好品としての要素」にいち早く気づき、CPの高い商品を提供して一気に買い手を獲得した例です。
ワークマンなども同様です。肉体労働をする人の作業着においては、機能性パフォーマンスばかりが注目されがちでしたが、ワークマンは「カッコいい作業着」をつくることで、他社製品よりも圧倒的に高いCPを実現することができたのです。さらに興味深いことに、ワークマンは情緒性パフォーマンスが重視されるアパレルの分野に、さまざまな機能性パフォーマンス(「動きやすい」「保温性」「防水性」など)を持ち込むことで、一般の買い手にとってもコスパ最強のファッションブランドとなることに成功しました。
このように、パフォーマンスの軸を変える方法はさまざまです。具体的なやり方については、のちほどもっと詳しく扱いたいと思いますが、今回はひとまず、CPを高めるにはコストを下げるか、パフォーマンスを上げるかのどちらかが必要であり、後者にはいくつかのやり方があるということだけ押さえておいていただければと思います。