内臓脂肪が健康に良くないのは周知の事実だが、それよりもたちが悪い脂肪があるようだ。それは、筋肉内に蓄積する脂肪(筋内脂肪)だ。本来なら脂肪が蓄積されないはずの筋内に脂肪が蓄積している状態〔myosteatosis(骨格筋異所性脂肪化)〕の人では、死亡リスクが上昇し、その上昇の程度は内臓脂肪型肥満や脂肪肝の人でのリスク上昇よりも大きいとの研究結果が報告された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部の消化器画像診断主任であるPerry Pickhardt氏らによる研究で、「Radiology」に5月16日掲載された。
本研究には関与していない、米ルイジアナ州立大学ペニントン生物医学研究センターのSteven Heymsfield氏によると、筋内脂肪は、肥満や糖尿病の分野で関心が高まりつつあるテーマだという。筋肉細胞の中にエネルギーの生成に必要な少量の脂肪が存在するのは通常のことだ。しかし、細胞の外側や筋線維、筋束の周囲に余分な脂肪が、「ステーキの霜降り肉のように」蓄積した状態になると、健康上の懸念が生じると同氏は説明する。
Pickhardt氏らの研究は、2004年4月から2016年12月の間に、大腸がん検診のために腹部の低線量CTスキャンを受けた健康な患者8,982人(平均年齢57±8歳、女性5,008人)を対象にしたもの。まず、腹部CT画像から体組成指標を抽出するAI(人工知能)ツールを作成。これを使って対象者の筋肉の総面積と密度、皮下脂肪および内臓脂肪の面積、および肝臓の体積密度を数値化し、脂肪肝、肥満、骨格筋異所性脂肪化、および/または骨格筋量の減少(ミオペニア)が認められる場合を「異常な体組成」とみなした。対象者を中央値8.8年追跡し、死亡または主要心血管イベントの発生について調べた。