「巨大赤ちゃん病」な大人の子どもは「熊孩子」
中国メディア「人民網」にも、「大人になっても精神年齢が赤ん坊のままな人。自己中心的でルールを守らず、予想外の事態が起きると情緒をコントロールできなくなり、幼児のような方法で抗議する。たとえば、泣いたりわめいたりして、他人に譲歩させ、自分の目的を果たす」とその説明が書かれているほどだ。
4月末、まさに、この説明に当てはまる事案が起きた。上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。
ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである。会社内でもルールを守らなかったり、陰湿な手口で同僚や取引先をおとしめたりすることだ。一見するとわからないことも多く、立派なキャリアを歩むエリート層の中にも「巨嬰症」の人は潜んでいる。
また、そうした「子どものような大人」の子どもなのか、親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」(ションハイズ=熊のように落ち着きのない子ども)問題も起きている。
これも「巨嬰症」と同じく2018~2019年頃に流行した言葉で、関連して「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)という問題も起きた。「熊家長」は学校の教師にも理不尽な要求などをすることから、日本のモンスターペアレントのように表現され、社会問題にもなっている。
日本とはレベルが違う「祖父母に預けっぱなし」事情
自分自身が親からしつけや家庭教育を受けていないため、自分の子どもをしつけられないのは当然といえば当然だが、そういう人が増えた背景には、考えられる要因がいくつかある。
その一つは両親が共働きで、子どもを自身の手で育てていないことがある。むろん、日本でも、共働き家庭で、子どもをしっかりしつけている親はいくらでもおり、共働きが直接の原因というわけではない。中国の都市部の場合、問題は、祖父母に育児のほとんどを任せっきりにしてしまう人がいることだ。
日本では、昼間は祖父母や保育施設に子どもを預けても、毎日夕方や夜には引き取り、夜は一緒に過ごすことが一般的だろう。だが中国では、近所に住む祖父母に平日ずっと(つまり週5日間)預けっぱなしということも珍しくない。祖父母と同居している場合は毎晩子どもと顔を合わせるが、「こちらはフルタイムで働いていて忙しいのだから、しつけも家事も祖父母の仕事」とばかりに、一切何もしない親も多い。祖父母を「無料のお手伝いさん」と思っている人もいるくらいだ。