「下の世話は家族で」と病院から言われたが…
ひとまず、翌日は新しい会社に向かった。そして結局、義父の介護は全部、夫が取り仕切ることに。工藤さんは会社の帰りや週末に病院に顔を出し、集中治療室のガラス越しに「お義父さん、早く良くなってくださいね」と祈るだけしかできなかった。
幸い、義父の容態は回復し、集中治療室から一般病棟に移った。すると、「下の世話は家族で」と病院から言われたが、義父が、「佐和子さんにはこういう姿を見せたくない」と、工藤さんのお見舞い自体が断られた。
「お義父さんのプライドですね。おかげで私が介護することはなかったんですが…」と、工藤さんは申し訳なさそうに筆者に語った。結局、「自分の親に何かあったら、実子が見よう」と夫と決めたという。
介護はある日突然、降りかかってくる。工藤さん自身の両親は健在で、地方に弟夫婦と一緒に暮らしている。夫の両親も高齢ではあるが、趣味の活動に積極的で、介護なんてまだまだ先の話だと思っていた。
社会人になって仕事を覚え、仕事が面白くなってきた20代後半から育児に直面するケースが多いように、セカンドキャリアを考えて、次のステージに踏み出そうとするころ、介護問題が発生することも多い。工藤さんは、「仮に介護に直面するのがもう少し早かったら、転職せず会社に残って、介護休暇を利用していただろう」と打ち明けてくれた。
誰しも親の介護に遭遇する可能性はある。実の親と違い、義理の親となると、どこまで関わるか線引きが難しいときもある。義理の兄弟姉妹との関係も、その点を左右するだろう。