義母に対して意外とドライだった夫の3兄弟

 もうひとり、北川美智子さん(仮名、49歳)のケースも紹介しよう。北川さんの夫は3兄弟の長男。義父を亡くした後、義母はひとりで地方に住んでいたが、近くに夫の弟夫婦が住み、よく様子を見に行っていた。「母さんの様子がおかしい」と義弟から連絡があったのは、正月休みが明けてすぐだった。

ある日突然、義父が倒れた!「自分の親に何かあったら…」夫婦で出した結論写真はイメージです Photo:PIXTA

 元日に親族が集まったとき、義母は、頭ははっきりとしていて孫たちとの会話もスムーズだった。義弟が言うには、原因はよくわからない。とにかく、義母ひとりにしておくわけにはいかない。かといって義弟夫婦は店を営んでいて、とても親の介護まで手が回らないという。

 結局、もうひとりの義弟とも相談し、北川さんの夫が義母を引き取り、北川さんの家の近くの高齢者施設に入所の手続きをした。

 北川さんは3兄弟が出した結論に口出しするのはやめようと思っていた。実際、北川さんには何の相談もなかった。だが、義母を施設に入れると聞いたとき、「ふ~ん、お金で解決することに決めたんだ。意外とドライなのね」と思ったという。というのも3兄弟はそろって親思いで、特に義父を亡くしてからは義母のことをいつも気にかけていた。だから、施設に入れるという選択が、北川さんには意外だった。

「最後の最後は施設に入るとしても、その前に3兄弟で面倒を見ることを考えなかったのか」と、当初は思ったという。だが、実際に北川さんも、義弟の妻たちも仕事を持ち、誰も介護ができる状況ではなかった。早めの施設入所は現実的な選択だった。「余計な口を挟まなくてよかった」と北川さん。

「愛する親を施設に入れるのは抵抗がある」「親不孝な気がする」と考える人も多いだろう。しかし、介護は気持ちだけでは成り立たない。実際に自宅で親を介護するのは、時間と体力、そして相当の覚悟が必要だ。中途半端な一時の感情ではなく、冷静に判断することが大切だ。