独立後に待ち受ける
農業の「3年の壁」
研修制度では前述のように給料が支給されないため、その間のお金については死活問題だ。ミドル世代の就農希望者にとっても、ここは気になるところだろう。そこで、国や自治体から新規就農者向けにさまざまな支援がなされている。
「『就農準備資金』では研修中に、最長2年、月12万5000円(年間最大150万円)が交付されます。自治体によっては他にも支援金が交付される場合もあります。また、独立後の支援金制度である『経営開始資金』もあります。これは認定新規就農者に対し、最長3年間、月12万5000円(年間最大150万円)が交付されます。これらは49歳以下が条件のひとつですので、40代での就農も十分可能です。ただし、前年の世帯所得が600万円以下の要件があるので注意が必要です。ちなみに、当センターが2年前に実施した調査によると新規就農者が当初営農にかかった金額は、755万円でした(機械・施設代、種苗代、肥料代などの合計)。さらに農業は1年目から収益が出るのはまれで、安定した経営になるまで少なくとも3年以上はかかります。そのような資金面の問題を支えるものとして、先ほどの支援金制度や公的な融資制度は有効です」
農業の業界では、俗に“3年の壁”と呼ばれるものがある。3年間は上記のような支援金が交付されるため、多少の赤字でも農業は継続できるが、それがなくなった後の4年目以降に真の農業経営の手腕が試されるのだ。ここで当初計画していた売り上げが上がらないなどの事態に直面し、農業をやめてしまう人もいるという。
ここまで就農までの大まかな流れを見てきた。一方、就農希望者の中には、今の(都心での)サラリーマン生活をしながら兼業で農業も……、と考える人もいるだろう。だが、その両立は現実的に難しいと堀江氏は話す。
「そもそも、週末農業は現実的ではありません。農地を取得するためには、農地法等の農地制度の条件をクリアする必要があります。常に農地を利用したり、農業に従事するという条件に照らすと、農地から遠く離れた場所の居住者には許可が下りません。農地のある所に住み、農業に生活の軸足を置き、リモートで仕事をするという形であれば可能ですが、通勤を伴うと両立は難しいでしょう。自然環境の下で天候や気温などを常に気にしなければなりません。常に農作物に目が届くようにしていないと農業で収益をあげることは難しいでしょう」