テレビやラジオでおカネの運用に関係する話をすると、高い確率で「山崎さん自身のおカネの運用はどうしていますか?」と質問される。下品とは言わないまでも、下世話を持ち味とする司会者は、気が利いた質問だと思うらしい。
個人投資家の中にも、「本人がやっている運用でうまくいっている人の話でなければ信用しない」という人がいる。
マネー評論家の中にも、見通しをはずし続けながらも、「私は、ここに書いた通りのポジションを自分でも持っている」と、自分の資産運用を議論の説得材料に使う人がいるから、「自分の運用」には一定の説得力があるのかもしれない。
機関投資家がヘッジファンドに投資する世界でも、運用者が自分の個人資産をどれだけ自分のファンドに投資しているかが、評価の対象になることがある。「自分のおカネが入ったファンドだから真剣に運用するだろう」という素朴な感情にアピールする。
しかし、多くの運用会社にあって、ファンドマネジャーが、自分の個人資産を、自社で扱う株式などの商品で運用することは禁止されているか、厳しく制限されている。例えば、小型の株(時価総額が小さい株)を個人で買い、その後ファンドの資産で大量に買うと、高い確率でもうけることができるが、もちろんこれは不正だ。
そこまでやらなくても、自分の資産運用とファンドの資産運用を同時に考えることは、前者が後者に影響する可能性があり、よいことではない。「ファンドの売買の前に自分が同じ株を売買してはいけない」というルールを設けていた外資系の運用会社があったが、この場合、自分が家を買うなどの理由で持ち株を売却したい場合、ファンドの株を先に売らなければいけないことになる。
また、自分が運用するファンドに投資するならいいと思うファンドマネジャーや運用会社も少なくないが、これも、自分にとっての時々のリスク評価が、ファンドの運用に影響を与える可能性があるから、望ましくない。