いま、若い人が早々に会社を辞めることが増えている。「やりたいことはこれじゃない」「自分らしく働きたい」など、価値観を理由に組織を去る人は後を絶たない。「どうすれば、若い人が辞めないのか」そんな悩みを抱えるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「花形部署ではないから辞めます」という選択をした若者の末路について解説する。(構成/種岡 健)
「なんでも平均的にできる人」という個性
そもそも、優秀さとは何でしょう。
生まれ持ったものでしょうか。
入社前のポテンシャルでしょうか。
転職してくる前職の実績でしょうか。
どれも違います。
優秀さとは、その組織に入ることで、いかに適応し、成長するかです。
「仕組み」によって組織に合わせていく能力です。
運動神経がいい人は、どんなスポーツも得意ですよね。
ゴルフがうまいけど、他はぜんぜんできない。これでは、運動神経がいいことにはなりません。
ビジネスも同じです。他業界や他の職種で成功したのなら、それを他の環境でも活かせないと意味がありません。
試行錯誤してコツをつかむ。
メンバーに再現性ある方法を伝える。
これらが本当の優秀さです。
本当に残酷なのは、どっち?
「ソツなくこなせる。まんべんなくできる」
こういう人が、バカにされる世の中です。
「平均はよくない。個性を尖らせろ」と言われる。
そちらのほうが残酷です。
平均も突き詰めると、個性です。
平凡な中にも、個性は滲み出る。
そのためには、最初から「これしかしません」と決めるべきでないのです。
「花形部署でないから辞めます」と、若いうちに決めてしまうのも、非常にもったいない。
そんなことは、50代、60代の次のキャリアで決めればいいんです。
そこまでの人生は、なんでもやってみればいい。
もし、やってみてダメなら、また他を試す。
それを繰り返すことができるのが、組織にいることの最大のメリットです。
そもそも、時代の変化のスピードが速いのですから、「適応」こそが武器になります。
どんな部署に行っても、やっていける人。
そこに価値が生まれます。
それなのに、なぜか、「管理職のようなホワイトカラーの仕事が無くなる」「なんでもできる人は淘汰される」と言われています。
本当に淘汰されるのは、「私はこれしかやりません」と若いときに決めつけてしまった人です。
変化に対応できる人しか、これからの世の中では生き残れません。
自分で自分の「可能性」を狭めてしまう
「得意なことだけを仕事にしたい」と言う人がいます。
「自分の長所を活かしたいんです」
「この会社のほうが特技が活かせそうです」
こういう思いが強すぎる人は転職を繰り返す「ジョブホッパー」になってしまう危険性があります。
転職先や新しい部署で少しでも苦手な仕事に出くわすと、
「もっといい会社があるかも」
「これは天職じゃない」
などと思ってしまうからです。
もちろん、長所や特技を活かせるような職場に転職することを否定はしません。
一方で、「自分の長所だけで活躍し続けられる職場」などというものはないということを忘れてはいけません。
立場や役割が変わると、「できない部分」や「うまくいかない部分」は必ず発生します。
「未経験なことだからやらなくてもいいよ」
「不得意なことならやらなくていいよ」
というような職場なんて、アルバイトでない限り、ほぼないでしょう。
どんな人でもできない部分やうまくいかない部分に向き合って「不足」を埋める必要があります。
それをやるから、成長し続けられるのです。
不足をしっかりと自分で埋めて、会社から評価される。この経験がないと、どこの会社に行っても、うまくいくことはありません。
「天職がない」ということは、成長し続けられる希望なのです。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)