シスコではいくつかのスピンイン案件が成功し、スタートアップを買い戻すことで組織内では生み出せなかった斬新なプロダクトを手に入れることができました。しかし前述したとおり、このスピンインモデルは現在は続いていません。その大きな理由の1つが、従業員の不満が大きかったことです。

 実際、シスコがスピンイン企業としてInsieme Networksを買収したときには、多くの従業員が退職してしまいました。「たまたま選ばれてスタートアップに出て行った同僚が、数年後に戻ってくると億万長者になっているのに、自分はそうではなかった」ということに対し、不満が生まれたのです。

 シスコが子会社を買い戻す際のバリュエーション(企業価値、買収額)が高すぎるという批判は、従業員の間だけでなく市場からも上がりました。そこで現在は、シスコもスピンインではなく、通常のM&Aや社内で新規事業を作ればよいという考え方になっているようです。

CEO交代で起死回生を遂げた
マイクロソフトとアップル

 先述したように社内で新規事業を創発して育て、事業として大きくすることは難しいことです。こうした大企業が新規事業を成功させるには、2つのパターンがあるようです。その1つがトップを新しいCEOに変えることです。

 現在、企業の時価総額ランキングを見ると、マイクロソフトとアップルがランクインし続けています。両社ともに1970年代に創業した企業で約半世紀の歴史があるのですが、グーグル(アルファベット)、アマゾン、フェイスブック(メタ)、テスラなどと並び、“生き残っている”というレベルではなく常に上位ランクを争っているのです。そしてマイクロソフトもアップルも、業績が大きく落ち込んだときにCEOが変わっています。