介護が理由なら
殺人罪も執行猶予の可能性

 もし、事件の背景に「週刊誌報道」だけではなく「老々介護」が関わってくるとなれば、刑事手続きや裁判での量刑がまるで違ってくる。

 最近では今年3月、介護していた夫(事件当時85)の首を絞めて殺害したとして、殺人罪に問われた妻(判決当時78)に神戸地裁は「過酷な介護だった」と情状を酌量し、執行猶予判決を言い渡した。

 昨年12月には富山地裁が、寝たきりの母親(事件当時84)を窒息死させたとして殺人罪に問われた息子(判決当時56)の「自力で動けない母親を楽にしてあげたかった」との動機を認定。判決に執行猶予を付けた。

 同11月には、妻(事件当時85)の依頼で首を絞めて殺害したとして、承諾殺人罪に問われた夫(判決当時81)に「誠実に介護していた」と認め、執行猶予とした。

 同10月にも、介護が必要な父親(事件当時79)を包丁で刺して殺害したとして、殺人罪に問われた息子(判決当時45)に秋田地裁は「心神耗弱」を認定し、執行猶予を付けた。

 いずれの判決を見ても、必死に介護しながら行き詰まって犯行に及んでしまったという場合は、執行猶予となるケースが多い。喜熨斗容疑者の心中に「母親を楽にしてあげたい」という気持ちがあったなら、起訴され刑事裁判となった後の結果に影響を与えるのは必至だ。

 もちろん、介護は一切無関係で「女性セブンの報道でメンツが丸つぶれとなり、その結果、生きていくのが嫌になったから家族全員で死のうと思った」という動機がすべてだったとしたら、身勝手極まりなく罪も軽いものでは済まないはずだ。

 一家心中を図りながら生き残った後、承諾殺人や嘱託殺人、自殺幇助の罪に問われるケースは少なくない。容疑者として逮捕されたばかりで、時間はまだかかるとみられるが、社会的に注目される事件だけに全容解明が待たれる。