東洋建設が6月27日に開いた株主総会で、筆頭株主で任天堂創業家の資産運用会社、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)の提案した取締役候補7人が賛成多数で可決となり選任された。これに対し、東洋建設が提案した取締役候補の選任は6人にとどまった。YFO側が提案した取締役が、過半数を占める極めて異例の事態となった。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
株総出席の個人株主も辛い評価
「配当性向100%は票集め」
かねて東洋建設に対して株式公開買い付け(TOB)を提案していた任天堂創業家の資産運用会社、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)が、株主総会で“勝利”を収めたといえる。
東洋建設は6月下旬の定時株主総会で会社提案として新任、再任を含めた取締役11人の選任を求めたが、なんと5人が反対多数で否決された。賛成多数で可決された取締役候補は、YFO側が賛成を表明していた、当時取締役専務執行役員だった大林東壽氏や、取締役執行役員副社長だった平田浩美ら3人を含む6人にとどまった。
これに対し、YFO側が提案した取締役候補9人のうち、社内取締役候補である元三菱商事代表取締役常務執行役員の吉田真也氏や元フジタ建築本部理事の登坂章氏を含む7人が、賛成多数で選任された。
株主総会での議決権が確定した今年3月末時点で、東洋建設の主な株主構成はYFO陣営が約27%、YFO側より先にTOBを提案した前田建設工業を傘下に持つインフロニア・ホールディングス陣営が約20%、東洋建設共栄会が約2%。東洋建設側とYFO側は株主総会直前まで、海外投資家を中心に熾烈(しれつ)な委任状争奪戦を繰り広げた。
YFO側が株主総会で提案した取締役候補が過半数を占めたことが示すように、東洋建設の経営スタイルに疑問符を付ける株主は、少なくなかったようだ。
「中期経営計画で『守りから攻めへ』とうたっているのに、配当性向100%というのは矛盾している。これこそ票集めだ」。株主総会に出席したある個人投資家は、東洋建設のこれまでの経営陣を批判した。
株主総会で質問に立った別の個人投資家は「東洋建設の資料を見るとYFOはとんでもない悪者に見えるが、任天堂を大きくした(創業家の)山内氏の孫がそんなに悪いことをするはずがない」と主張した。
株主総会の結果からすれば、外部の人材を活用しながら企業価値の向上を目指すべきだ、というメッセージを株主が会社側に示したといえる。
株主総会を受けて東洋建設は「株主様のご判断でありますので尊重して受け入れます」とコメントを出した。
ところが、である。すんなり“ノーサイド”とはいきそうにないのだ。
次ページからは、YFOが提案する東洋建設TOBの行方に加え、東洋建設を待ち受ける“最恐”シナリオをつまびらかにする。東洋建設で新たな経営体制が発足した矢先、“社長解任説”が取り沙汰されているのだ。会社対株主の対立構図は、今度は取締役会に持ち込まれ、事態は泥沼化の様相を呈しそうだ。