社外取締役バブルの実態を、データを基に炙り出す。ダイヤモンド編集部は独自試算で社外取を、報酬や兼務社数、企業業績など六つの軸で徹底評価。1000点満点で10160人を完全序列化した。特集『社外取バブル2023「10160人」の全序列』(全11回)の#1では、日本の上場企業の社外取締役「全10160人」を網羅した実名ランキングの前編として、上位5000人の実名と総得点を紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
企業に女性役員比率の目標を課した岸田首相
報酬額は上昇、社外取バブルの過熱は必至
日本企業の社外取締役の実態を、最新データに基づき実名で暴く――。これが本特集の趣旨である。
なぜ、社外取の実態を検証する必要があるのか。そもそも、経営を監督する仕組みであるコーポレートガバナンス(企業統治)改革の柱に据えられる、社外取への期待は高まるばかりだ。
近年で大きなインパクトがあったのは、東京証券取引所と金融庁による2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂だろう。上場企業は、取締役の3分の1以上を社外取にすることや、取締役会の多様化などを求められるようになった。
今年4月には、岸田文雄首相が東証プライム市場に上場する企業に対して、「30年までに女性役員比率を30%以上にすることを目指す」と表明した。
これを受け、5月22日には内閣府の有識者会議が、プライム上場企業は「25年をめどに女性役員を最低1人は選任するよう努めるべきだ」との提言案をまとめている。東証の上場規則に、目標について規定するのが適当であるとも明記したのだ。
政府の音頭取りもあり、社外取に女性を起用する動きは一層活発化しそうだ。社外取の獲得競争は既に激しくなっており、報酬額のさらなる上昇など、社外取バブルの過熱は必至の情勢となってきた。
しかし、社外取の真価や存在意義が試される、業績不振の企業や不祥事のあった企業をチェックすると、「お友達」クラブの域を出ないお粗末なケースがあまりに多い(#3『赤字・株価低迷なのに高報酬な社外取ワーストランキング【300人の実名】三井・三菱系の大物経営者も』や、#5『不祥事企業の社外取締役の「報酬額」を完全公開!関電、電通、富士通…【全18社82人】』 参照)。
今回、ダイヤモンド編集部は、上場企業の社外取「全10160人」の、報酬や兼務社数などで独自試算した実名ランキングをはじめ、計8本のランキングやリストの公開を予定している。その意図は、彼ら彼女らが高額報酬に見合う働きぶりかどうかを検証するためだ。株主総会シーズンのピークを前に、投資家には必見の内容だ。
まず独自ランキングの第1弾として、推計報酬額や兼務社数、業績など六つの評価軸を設定し、1000点満点で社外取全員の実名序列化を試みた「総合ランキング」をお届けする。
今回は総合ランキングの前編として、社外取10160人のうち、まずは上位5000人の得点結果を公開する。
上位を見ると、外資出身を中心に女性の社外取が目立つ結果となった。大手企業の男性経営者もトップ10に食い込んだが、並み居る大物を抑えて首位に立ったのは、トヨタ自動車や日立製作所など超名門企業で複数の社外取を兼務する官僚OBだった。
それでは詳細を見ていこう。なお、201~4999位の社外取については、氏名や社名で検索できる。併せてチェックしてほしい。