ノートパソコンとテイクアウトのコーヒー写真はイメージです Photo:PIXTA

業務に使うノートパソコンを、全社で一斉に新しいものに入れ替えて間もなく、ある社員が不注意でパソコンを壊してしまった。会社の備品などを社員が壊してしまった場合、会社は弁償分を全額請求し、社員の給料から引くことができるのだろうか?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
今年創立10周年の会社。企業向けウェブページや広告用動画、パンフレットなどを作成している。
<登場人物>
A:甲社の社長。40歳
B:4年前に中途入社した総務スタッフ。30歳。会社近くのアパートで一人暮らしをしている。
C:パソコンを修理・販売している乙社の社長。A社長とは高校時代の同級生。
D:乙社の顧問社労士。乙社から徒歩5分の場所にあるオフィスビルに事務所を構えている

今年になってパソコンが
立て続けに故障

 法人向けにウェブページや動画、パンフレットなどを制作する甲社。当初は社長のAが一人で業務全般を行っていたが、5年前、あるベンチャー企業の広告を一手に引き受けるようになってから業績が大幅にアップした。その後は順調に顧客数を伸ばし、現在はA社長の他に顧客の要望に合わせた広告物を自ら企画、製作したり、外注に依頼した業務の管理を行うディレクター14人と総務職1人、合計15人のスタッフを抱えるようになった。

「また故障かよ。これでもう10台目だ」

 今年に入ってから、社内のパソコンが相次いで故障するようになり、6月上旬、A社長が使っているパソコンもついに電源が入らなくなってしまった。故障するたびにCに連絡し修理を依頼するのだが、その間は仕事が中断するし、修理代もかさんで困っていた。会社のパソコンはすべて導入から5年以上経過しており、仕事柄酷使してきたので故障のリスクが高いことと、機種が古くなり処理能力に遅れが発生する頻度が増えたこともあり、6月中旬、A社長はCに相談した上で、20台ある社内のパソコンを全部最新モデルに買い替えることにした。