韓国メディアの多くが
文在寅前政権を支持する理由

 韓国では、革新系に対する支持率はいまだに30%ほどある。それは、70年代から80年代にかけて軍事政権が国を統治し、学生運動を取り締まってきたからである。そして、その後の革新系政権の教育により、そのときの体験を身と心に染み込ませてきたからであり、50代前半の人々の革新支持の思想は、文在寅政権の失政にもかかわらず不動なものになっている。

 現在、韓国のメディアで中堅幹部以上を占めるのがこの世代の人々であり、かつ過激な労組の圧力で、韓国のメディアは朝鮮日報、中央日報などの一部メディアを除けば革新色が強い。加えて、こうした報道機関は文在寅政権時代の人事で革新色が一層強くなり、ますます文在寅前政権を支持する報道を行うようになっている。

 特に放送メディアのKBS、MBC、SBSは革新に寄り添った報道を行う傾向にある。政府は放送メディアに対し、幹部人事や電波法を利用した圧力で、弱みを握ってきた。尹錫悦政権にとって、こうしたメディアの偏向した報道は支持率回復の障害となっている。これをいかに是正するかが課題である。

「極右」「反国家勢力」論争を行っていく上で、政府与党にとって障害となるのは、韓国のメディアの姿勢であろう。メディアが事実に基づき、公平な姿勢で報道しないならば、尹錫悦大統領が始めた国家論争を有利に進めることができない。尹錫悦大統領にとってメディアとの対決は避けて通れない道になってきているようである。

大手ポータルの掲載順を巡る
民主党による圧力疑惑

 韓国の大手ポータルサイト「ネイバー」でニュース検索した際の掲載順位について、MBCが首位となるよう、民主党が圧力をかけていたことが、テレビ朝鮮の独自取材で明らかになった。

 ネイバーは2019年、社外の人物で構成された検証委員会の指摘を受けて、掲載順位を決めるアルゴリズムの中に、別サイトで言及された回数でメディアの人気度を判断する指標を追加。その結果、掲載順位は1位聯合ニュース、2位朝鮮日報、ハンギョレ、続いて東亜日報、KBSの順となった。

 しかし、2021年にネイバーはアルゴリズムを変更。テレビ朝鮮によれば「民主党の指摘を受けてネイバーは、メディアを系列別に分け、通信社3社を上位に、一般報道機関ではMBCの順位を最も上位とした。一方、朝鮮日報は6位に後退、保守的メディアの順位を下げてつぶしにかかった」という。

 なぜ、民主党が圧力をかけてMBCを上位にしたとの疑惑が持ち上がっているのか。それは、MBCの報道姿勢が政府与党を攻撃し民主党を支援しているからである。

 昨年9月21日にニューヨークで尹・バイデン会談が行われた際、MBCは、会場を出る尹錫悦大統領が「国会でこのXXらが承認しなければ、バイデンはメンツ丸つぶれだな」と発言したとして、その内容を字幕付きで報じ、「既成事実化」した。

 この発言内容に関しては、専門家も確認しにくい音声だったといい、大統領室は、「(それを字幕付きで既成事実化するのは)取材倫理に反する、明白に国益と外交成果を損することだった」として、MBCに対し真相の確認を求めた。しかし、MBCはこれに応じなかった。

 韓国には全国言論労働組合があり、同組合は過激な行動で北朝鮮ともつながりがある民主労総に加盟している。その中心となっているのがMBCとSBSであり、米韓首脳会談後の出来事は、尹錫悦政権と民主労総の対立鮮明化という状況下で起きた事件である。

 こうしたMBCの報道をネイバーで人気度1位に位置付けることで、民主党は政府・与党攻撃に利用している。