テレビ番組で紹介されて起こったこと
最後は、「お客様(誰からお金をもらうのか)」についてです。
私は、ただ商品が売れたらそれでいいとは考えていません。どういうお客様に買ってほしいのか。どんなふうに買ってほしいのか。お店づくりには、「誰に売りたいか」を考えることも必要だと思っています。
私はある日、自分のnote(ブログ)にこんな文章を書いたのです。
タイトルは「来ないでください」。
「わざわざ」は、開業以来いろんな取材依頼をいただいてきましたが、ずっとテレビの取材は断っていました。危惧していたのは、全国ネットで放映されると多くのお客様が来店して、パンが枯渇してお店が回らなくなるかもしれないという単純な理由です。キャパシティの小さいお店にたくさんのお客様が来ると、パニックになることはすぐに想像できます。
ただ、とある大手テレビ局から取材の依頼をいただいたときにはとても悩みました。
ディレクターさんが何度もお店に来てくださって、いろいろとお話をしてくださったのです。わざわざ足を運んでくださったことは単純にうれしかったし、信頼できる方かもしれないと思いました。熟考した結果、「『わざわざ』らしいものになるのならば受けてもいいのでは」という答えになったのです。
ところが。
放送されたものは、打ち合わせ内容とはまったく違うものに仕上がっていました。
もともと打ち合わせでは、パンのことだけではなくオンラインストアでの日用品販売のことや、オリジナル商品のことも紹介してくださいとお願いしていました。パンだけが紹介されたら、そこに注文が殺到して足りなくなることがわかっていますから。
そのことについては了承を得ていたはずなのに、蓋を開けてみると見事にパンのことだけ。「パンと日用品の店」のはずが「パン屋」として紹介されていたのです。
予想どおり、お店はすぐにパンクしてしまいました。
朝から晩まで電話は鳴りっぱなし、お店の中は人でパンパン、外には行列ができている……。
お客様が一気に増えると、もちろんパンは足りなくなります。
だから大型連休でいつもしているように、朝から個数制限をして販売することにしました。お店に来てくださったお客様みんなに、できるだけ買っていただけるようにするためです。
でもそうすると、お客様の中で怒る人が出てきてしまいました。「わざわざ遠くまで来てやったのに、1個しか買えないとはどういうことか!」と。