そもそも、お店を出店しようと考えたときは、できるだけ人通りの多い場所に構えようとするのがふつうだとは思います。ですが、「わざわざ」の場合、最終的に人があまり通らない山の上に構えました。

 偶然通りかかった人が来店するケースはほぼないに等しく、お客様のほうからお店を目指してくれる状況をつくらねばなりません。ですから「探していたけど見つからなかった」「やっとここで見つけた!」というような気持ちといっしょに商品やお店にたどり着くような、お客様が渇望して来店するようなイメージを持っていました。

 そしてさらに、そこに素晴らしい景色があれば、やっと見つけたものと融合して、かけがえのない体験になるのではと考えたのです。

売るパンを2種類に絞り込んだわけ

 次は、「商品(何をお金に変えるのか)」についてです。

「わざわざ」では現在、カンパーニュと角食パンという2種類のパンと、自分たちが使って心から「良い」と思った日用品、そしてオリジナル商品など約2500種類の商品を販売しています。

 開業当初は27種類のパンとお菓子を焼いて販売していたのに、商品のラインナップが今ではまるで変わってしまいました。

 なぜ売るものが変わっていったのでしょうか。

 目的の1つは「効率化」です。

 1人で27種類ものパンを焼いていると単純に非効率なので、少ない労働力でより製造量を増やせるよう、まずは種類を減らして価格を上げました。開業してからどんどん労働時間が増えていき、仕事で疲弊する日が続いていたので、もっと自由な時間が欲しい、家族との時間が欲しいと考えた結果です。

 そして、パンの種類を減らしたのには、もう1つの理由があります。

 それは、自分の健康と同時に「お客様の健康を守るため」でもありました。

 当初作っていた商品の中に「チョコレートパン」がありました。ココア生地にオーガニックのチョコレートとオレンジピールを混ぜたパンで、とても人気のある商品でした。

 お客様の中に、いつもそのパンをあるだけ買っていってくださる方がいました。5個とか10個とか、たくさんまとめ買いされるのです。