そのうち、その方が日に日にふくよかになっていき、1年後には体型が変化しているのが見てわかるまでになりました。
「私のパンが原因で太っていっているのかな」と不安になりました。
そして、いちパン屋がお客様に対して口を出すことではありませんが、思い切って「このパンをいつ召し上がっているんですか」と、その方に聞いてみたのです。
すると、「冷凍しておいて、会社でお弁当の後に食べてます」とのことでした。食後のデザートに毎日食べているという事実に、まず驚きました。そして、衝撃を受けた私はとっさに言いました。
「もう、明日からそのパンを焼くのやめようと思います」
自分で作ったパンを「体に悪いから」と言って、もう売らないパン屋なんてめちゃくちゃです。だけど当時の私は、自分の作ったものが誰かの健康を損ねているかもしれないという事実を、どうしても許容できませんでした。
そのときに、「『わざわざ』のパンはデザートではなく食事である」ということをはっきりと認識しました。そして、商品を食事パン2種類まで減らすことを決めます。
2種類に切り替えた直後はお客様が減り、売上が激減してしまいました。ですが1年ほどで回復し、2013年には売上1千万円を超え、翌年からも2倍ずつ成長していくことになりました。
ちなみに、チョコレートパンを購入してくださっていたお客様は、その後もずっと常連でいてくださいました。それはとてもうれしかったです。
ありがたい気持ちでいっぱいですし、これこそ自分が求めていた「何を売るか」の答えだと思っています。