なぜわが社の新規事業は失敗するのか

 このように新規事業だけ、一意専心でやってきて、私は自身の経験から次の3つの結論に至った。

 まず1つ目は、(1)企業は必ず新規事業を生み出せる、ということ。
 しかし、(2)社内起業は99%同じ失敗をしている、ということ。
 そして、(1)であり(2)であるならば、(2)を回避することで成功確率は飛躍的に上がる、ということだ。

 まず「(1)企業は必ず新規事業を生み出せる」と結論づけた理由からお話ししたい。

 それは、新規事業は多産多死が当たり前で、生存確率を許容できる資金力において、ヒトもカネも情報も信用もほぼゼロであるベンチャーとは比べものにならないくらい、社内起業が有利だからである。

第3図:新規事業が生まれ育つサイクル第3図:新規事業が生まれ育つサイクル(『新規事業を必ず生み出す経営』P.42より転載) 拡大画像表示

 第3図をご覧いただきたい。これは、新規事業が生まれ育つサイクルを表したものである。縦軸は事業の採算で、横軸は時間だ。曲線に沿って大小の黒丸が配置されているが、この黒丸の一つ一つが事業であり、大きさは事業の価値を表している。

 この図が示すとおり、最終的に大きな黒丸(価値の高い事業)を1つ生み出す過程には、おびただしい数の事業アイデアがあり、さまざまな理由でこれらはどんどん死に絶えていく。なぜなら、大抵の新規事業は、最初に描いた事業計画どおりにはいかないからだ。

 何しろ、新規事業の存在意義は、世の中にある未だに解決されていない課題の解消であり、その対象とする顧客すら存在するかが定かではないものだ。したがって、事業開発のプロセスというのは、顧客を想定し、その顧客に対して、

「こういうことで困っていませんか?」
「こういう解決方法があったら、いまの方法からスイッチしますか?」

 と幾度も仮説をぶつけてみて、その誤差をもとに磨き直して、また顧客にぶつけてみる…という「市場・顧客と仮説のすり合わせ」の繰り返しである。そして、新たな事実がわかるたびに仮説を修正し、事業の確度が高まるたびに高まった分だけリソースを追加、やがて、これならば勝てるという「勝ち筋」にたどり着くことで一気呵成(いっきかせい)のスケールに突入していくというプロセスをたどる。