ロシアとウクライナを
仲介できる首脳はいない
その習近平主席にしても、ゼレンスキー大統領が「クリミアを取り戻すまではやめない」と述べている以上、現状でロシアとウクライナを和平合意に持ち込むのは難しい。
確かに習近平主席はゼレンスキー大統領にも一定の影響力があるが、そもそもロシア・ウクライナ関係に中立を保っていた中国を、一気にロシア寄りにしたのが習主席その人である。マクロン大統領がいかに手を尽くそうが、中国を和平の仲介者として引っ張り出すことが基本であれば、日米やEUがそれを望んでいない以上、中国主導の和平合意など絶望的だろう。
ロシアとウクライナ両方にアクセスできて仲介が取れる主要国としては、中国のほかに、トルコ、イスラエルなどが考えられるが、いずれの首脳も和平まで持ち込む腕力に欠ける。
最も可能性があるのはアメリカのバイデン大統領だが、就任早々に「プーチンは殺人者だ」と述べて、「ウクライナのNATO加盟を支援する」とゼレンスキー大統領と約束するなど、むしろロシアによるウクライナ軍事侵攻のきっかけの一つを作っており、和平の仲介など望むべくもない。
アメリカでトランプ大統領が復活すれば「もしかしたら」とも考える。トランプ大統領の4年間、北朝鮮もロシアもおとなしかった。トランプ大統領が退任してから、わずか2年で世界はこれほど崩れてしまったのだ。いずれにせよ、ウクライナ戦争が長期化するのであれば、アメリカで腕力のある大統領が誕生することが望まれる。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)