TikTokを見てみると、“ヤンキー座り”で待機していた店員がメニューを投げるように渡してくる動画は約200万回、不機嫌な店員が「いつまで撮ってんの?撮影止めてくんねぇ?」と高圧的な口調で客に注意する動画は約450万回再生されています。

 the LAZY HOUSEの動画はオープン前の内覧会で撮られたようなので、現在も同様の接客が行われているかは不明ですが、店員の失礼さは「友達がやってるカフェ」の比ではないように思えます。

 こうしたコンセプトのお店は、どうして若者にウケているのでしょうか。前回の記事で触れなかったポイントを中心に、詳しく見ていきましょう。

“店員が失礼な飲食店”を
Z世代が楽しめる二つの理由

 筆者の見立てでは、その理由は大きく二つあります。

 一つ目の理由は極めてシンプル。「接客態度が常識外れだとSNS映えするから」です。

 ユーザーの立場からすると、店員が教科書通りの接客をする動画をSNSに載せても、コンテンツとしての面白みはそれほどありません(SNS映えしません)。

 お店の立場からしても、大衆向けレストランや居酒屋の店員がどれだけ丁寧におもてなしをしても、そのレベルはホテルや高級料理店には絶対に勝てません。有効な差別化要因にはなり得ないと思われます。

 一方で、店員が“タメ口”を使ったり、メニューを放り投げたりするとどうでしょうか。良くも悪くも、来店客がその様子を撮影したコンテンツは注目されますし、お店に興味を持つ人も増えますよね。

 一般常識に「逆張り」する戦略ですが、それがかえって「映える」という付加価値につながるのが今の時代だといえます。

 二つ目の理由は、ちょっと意外なものでした。

 世の中の店員には、コンセプトではなく本当に接客が苦手な人もいます。悪気なく不愛想な態度を取ってしまったり、レジに並ぶ列を混ませてしまったりし、お客さんを怒らせることもあります。

 残念なことに現代のSNSでは、そうした店員が接客している様子やお客さんとトラブルになっている様子を隠し撮りし、ネットに晒(さら)す行為が後を絶ちません。そして今のZ世代は、この傾向を「やりすぎだ」と感じているようです。

 筆者が話を聞いた若者も、「店員を晒す投稿がSNSで増加しているが、接客に対する批判が過激だと感じている」と話していました。その上で、最近はやりの「店員がフランク、もしくは失礼」というコンセプトのお店については「現在の風潮に逆らっている点が面白いと思う」と分析してくれました。

「仕掛け人」の店舗側がそこまで意図していたかは分かりませんが、言うなれば今の若者たちは、店員を晒す投稿がはびこるネット文化への「逆張り」として、一風変わった接客のお店を楽しんでいたのです。

 筆者は今後、店舗側にも調査を進め、どんな狙いでこうしたコンセプトを発案したのかを聞いてみるつもりです。成果が得られれば本連載で紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。