秋本真利議員に強制捜査!洋上風力コンペ第3弾を襲う「シナリオ修正」で大混乱必至国会で答弁する秋本真利衆議院議員 Photo:JIJI

政府が推し進める洋上風力発電事業を巡り、前外務政務官で秋本真利衆議院議員(自民党離党)が、風力発電会社、日本風力開発から不透明な資金提供を受けた疑いがあるとして、東京地検特捜部は4日、収賄容疑で秋本氏の議員事務所などへの家宅捜査に踏み切った。再生可能エネルギー政策の“キーマン”である秋本氏への強制捜査によって、政府が年内に公募を予定する洋上風力発電コンペ第3弾が大混乱となるのは必至だ。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

洋上風力コンペ第1弾後に
「ルール変更」を猛烈に訴える

 秋本氏は4日、自身の議員事務所への家宅捜索を受け、外務政務官を辞任。5日には自民党を離党した。

 秋本氏は千葉県富里市議を経て、2012年衆議院議員選挙で初当選し、現在4期目。脱原発を掲げる再エネ急進派で、自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(再エネ議連)の事務局長を務める。河野太郎・デジタル相の側近の一人でもある。

 17年に国土交通政務官に就任し、18年に成立した洋上風力発電の普及拡大を目指す再エネ海域利用法の整備に尽力した。

 秋本氏に不透明な資金を提供した疑いがある日本風力開発(日風開)は1999年の創業。再エネ大手では“老舗”にあたり、内外で約57万キロワットの陸上風力発電所を開発した実績を誇る。

 21年12月に実施された政府公募の洋上風力発電プロジェクトのコンペ第1弾では、日風開は秋田県沖2エリアで応札したものの、圧倒的な価格破壊を見せつけた三菱商事に惨敗を喫した。

 洋上風力コンペ第1弾で三菱商事が圧勝した後、噛み付いたのが秋本氏と日風開だった。

 日風開側は、政府公募の洋上風力コンペに関するルール変更を求め、秋本氏が事務局長、河野氏が顧問を務める再エネ議連に働きかけていた。

 それを受けたかのように、秋本氏は洋上風力発電事業を管轄する経済産業省側に対し、ルール変更を猛烈に訴えた。22年2月の衆院予算委員会でも、萩生田光一経産相(当時)に対し、「評価の仕方を見直していただきたい」などと求めている。

 秋本氏らの働きかけが奏功したのか、政府は22年10月、洋上風力発電の運転開始時期を最も早く提示した事業者を評価するなど、先行事業者へ有利に働く公募ルールの変更に踏み切った。洋上風力コンペ第2弾は、新たなルールの下で公募が行われ、6月末に入札を締め切っている。

 ルール変更の背景に、日風開側から秋本氏への不透明な資金提供が関連しているのかどうかは、現時点では明らかにはなっていない。すでに東京地検特捜部は日風開の社長から任意で事情聴取し、資金の流れについて捜査を進めているもようだ。

 日風開は「国会議員ほか公務員に対し贈賄をした事実は一切なく、この点を立証できる客観的な証拠が数点存在しています」とのコメントを発表している。

 いずれにせよ、再生可能エネルギー政策の“キーマン”である秋本氏への東京地検特捜部による強制捜査は、政府公募の洋上風力コンペ第3弾の行方に大きな影響を及ぼすのは必至だ。

 次ページからは、政府公募の洋上風力コンペ第3弾で予想される二つのシナリオを明らかにする。両シナリオともコンペ第3弾に大混戦や大混乱を招く公算が大きいのだ。