政府公募の洋上風力発電第2弾コンペの秋田県中部沖プロジェクトで、参戦を予定していた三井物産が撤退する方針を固めたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。加えて、このプロジェクトに「超大物」が助っ人として電撃参戦することも判明した。連載『決戦!洋上風力第2ラウンド』では、土壇場で飛び入りを決めた超大物の正体を明らかにするとともに、同エリアに参戦予定の商社やゼネコン、電力・ガス・石油元売りといった大手企業の実名を一挙公開する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
ルール変更とパートナー撤退が痛手
三井物産は「死のグループ」に専念
政府公募の洋上風力発電プロジェクト第2弾の秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖(以下、秋田県中部沖)プロジェクトに、参戦を予定していた三井物産が撤退する見通しであることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペで、第2ラウンドが初陣となる三井物産は、秋田県中部沖のプロジェクトについて、カナダのエネルギー大手であるノースランド・パワーや大阪ガスとコンソーシアムを組んで参戦する予定だった。
洋上風力に詳しいエネルギー業界関係者によると、三井物産が秋田県中部沖のプロジェクトから撤退する決断に踏み切った要因は、大きく二つあったとみられる。
要因の一つ目は、政府公募のコンペを巡り実施された「ルール変更」である。
第1ラウンドは、三菱商事が超ド級の価格破壊を見せつけて、3エリアを総取りする圧勝で幕を閉じた。これに憤慨したライバルが政府にルール変更を訴え、第2ラウンドでは“応札価格”だけで勝敗が決まらない仕組みが導入された。
その上で、さらに応札価格の評価項目で、政府の補助金にほぼ頼らない「ゼロプレミアム水準」という基準が設けられた。これにより、事業者がコンペで勝ち抜くためには、ゼロプレミアム水準でプロジェクトを作り上げることが求められるようになった。
黎明期に当たる日本の洋上風力発電プロジェクトはただでさえ採算が厳しいとされる。ルール変更を経て迎える第2ラウンドでは、よりプロジェクトの難易度が上がった。三井物産は秋田県中部沖のプロジェクトは採算に合わないと判断したといえる。
もう一つの要因は、コンソーシアムを組むノースランド・パワーが日本の洋上風力発電事業から撤退する方針を固めたことにある。
スコットランドやポーランドなどグローバルで洋上風力発電プロジェクトの実績があり、豊富なノウハウを持つノースランド・パワーの撤退は、三井物産にとって痛手だった。
秋田県中部沖のプロジェクトから撤退する方針を固めた三井物産は、同じ第2ラウンドの舞台である新潟県村上市、胎内市沖のプロジェクトにドイツのエネルギー大手、RWEおよび大阪ガスとコンソーシアムを組んで参戦する。
新潟県沖のプロジェクトは少なくとも6事業者がひしめく超激戦区。三井物産は「死のグループ」の突破に専念することになった。
三井物産が秋田県中部沖のプロジェクトから撤退を決めたものの、ライバルは気が抜けない。というのも、超大手企業が新たに“助っ人”として電撃参戦することになったのだ。この乱入者は、政府公募コンペに初参戦となり、「最後の大物」ともいわれる。秋田県中部沖のプロジェクト争奪戦は、より熾烈な戦いとなることが予想される。
では、この乱入者の正体とは。次ページでは、秋田県中部沖のプロジェクトに電撃参戦を決めた「最後の大物」の正体を明らかにする。また、このエリアへの参戦を予定する商社やゼネコン、電力・ガス・石油元売りなどの主な大手企業の顔触れを一挙公開する。