ディスカッションテーマは
『もしドラ』でもおなじみの、あの問い

 毎朝4時に起床し、読書量は年間200冊。「朝活の達人」としてNHKなどメディアからの取材も多く受ける小川さんは、大のドラッカーファン。ということで、今回の企画が実現することになった。

小川 私は毎週、スカイプでドラッカーの勉強会をしているんです。しかも朝6時スタート。信じられないですよね(笑)。カレンダー形式でドラッカーの言葉を紹介している『ドラッカー 365の金言』の、その週の日付からテーマを選んでディスカッションをします。人の意見を聞くことで、違った視点から物事を見られるのが、すごく勉強になるんです。

朝7時すぎとは思えない真剣さ。いやむしろ、仕事前の自分の時間だからこそなのかもしれない。

 今回は、ふだんのエビカツとは違い、『決断の条件』の中に登場する事例をテーマに、ファシリテーターが中心となって、ディスカッションをすることに。

 取り上げるのは「マリナー紙問屋にとっての事業は何か」。ストーリーは、1920年代前半のアメリカで、倒産の危機にあった紙問屋マリナー社が、総支配人として別の紙問屋の有能な支店長・フレンチを招くところから始まる。

 フレンチは、競争の激しい大都市を避け、中都市の小さな紙店を傘下に納めていく。そして、大きな町の店では紙だけを扱い、中くらいの町の店では加えて印刷業者用のインクなども扱い、また小さい町ではさらに事務用品も扱うことで事業の拡大を進め、1950年には、マリナー社を全29店、年商6000万ドルの規模にまで成長させた。

 50年代の中頃、2つの問題が起きる。ひとつは、重要な意思決定のすべてを行ってきたフレンチが突然老けこんだこと。もうひとつは、値引きが進むなど、紙卸業界の競争が激しくなったこと。主な株主だった3人の男は、それぞれこんなことを言った。

「紙問屋が独力でやっていける余地はない。大手の製紙会社に売却すべきだ」
「売上げのかなりの部分は、小さな店が上げている。インク、印刷機器、化学薬品を扱う印刷業者のためのサプライヤーになれば、売上げは3倍になる」
「コピーやプリンターなど、明日の市場に目を向けるべきだ」

 この事例におけるドラッカーからの質問は、マリナー社にとって「われわれの事業は何であるべきか」というもの。『もしドラ』の中にも登場した、おなじみの問いだ。