少子化高齢化の影響で売り上げは毎年微減が続き、良くて前年並みがどのカテゴリーでも続く食品業界。そんな業界で発売後20年以上経つにもかかわらず、昨年突然前年比1.6倍の伸びを示した商品がある。カルビーのシリアル、フルーツグラノーラ(フルグラ)だ。発売は1988年で、毎年新商品が出ては消える食品業界では“古株”に入る。
グラノーラとは、コメや麦などをシロップを掛けてシート状にして焼き、それを粉砕した後ドライフルーツを混ぜたもの。コーンフレークなどと並び、朝食向けのシリアルとして販売されている。
現在、国内でシリアルを販売しているのは日本ケロッグ、日清シスコとカルビーの3社だが、カルビーはフルグラの好調でコーンフレーク主体の他2社を抑え、シリアル市場でトップシェアに躍り出た。
そもそも、日本でのシリアル市場は低迷が続いていた。米国では主食として1兆円の市場を持つシリアルだが、日本市場は年間200億円にとどまる。シリアルが日本に登場した80年代は9社あったメーカーも、相次ぎ撤退した。フルグラも、2002年にリニューアルで売上を伸ばした以降は、一進一退だった。
転機になったのは12年。これまで、子供の朝食向けとしてマーケティング活動を行ってきた方針を一転し、幅広い年代層向けにまずは口にしてもらうことを目標にした販促活動に切り替えた。店頭での試食販売活動を、11年度の約100店舗から10倍の1000店舗に増やすなど、営業資源を集中投下したのだ。
朝食用途のみならず、調味料や料理の素材として使えるアレンジレシピを社員が作成、レシピ本の出版まで行い、ネットでの口コミを集めた。好調ぶりを受けてカルビーでは13年は店頭試食販売をさらに倍増の2000店に増やし、9年ぶりにテレビCMも復活させるなどさらに販促を強めていくという。
フルグラへの注力は09年にジョンソン・エンド・ジョンソンからカルビーに入社した、松本晃CEO(兼会長)肝いりの施策でもある。「コーンフレークなど一般のシリアルにはあまりおいしくないというマイナスイメージがあるが、この商品は品質が高く一度食べた顧客の評価が高いにもかかわらず、一度も口にしたことがない顧客が多かった。認知度を高めれば売り上げが伸ばせる商品と確信した」と松本CEOは言う。
こうしたフルグラの販促効果もあり、カルビーのグラノーラカテゴリーの売り上げは12年に60億円に達した。13年3月期の連結売上高予想が1632億円だから、単体カテゴリとしてはかなりの規模になる。「14年には100億円、中長期的には200億円の売り上げを狙う」と伊藤秀二・カルビー社長は言う。