夜、甘い物を食べるのが良くない理由

 寝る前に甘い物を食べることは、大いに虫歯の原因になり得ます。寝ている間は歯の救世主である唾液の量が減ります。健康な人で1日1~1.5Lの唾液が分泌され、日中は平均19ml/時の分泌ですが、寝ている間は平均2ml/時まで減少します。

 ですから、寝る前に甘いものを食べると口の中のpHが酸性になったままで回復せず、歯からカルシウムが奪われる状態が数時間以上続きます。ここで注意したいのが、たとえ歯を磨いても酸性の状態は改善しません。だから、寝る前に甘い物を食べるのは避けた方が良いというわけです。

「どうしても甘い物が食べたい…」いう人には、代わりにガムをおすすめします。ガムをかむと唾液量が9倍以上に増え、口の中のpHの正常化を促し、虫歯菌や食べカスを洗い流す唾液の洗浄効果が促進されます。また、咀嚼(そしゃく)は満腹中枢を刺激し、空腹感を紛らわしてくれることから、ダイエットをしている人にも有効な方法の一つでしょう。ただし、ガムは砂糖成分を含まず、pHに影響を与えないキシリトール入りを選んでください。

砂糖が入っていなくても虫歯の原因になる

 では、「シュガーレス」や「ノンシュガー」と表示されている食べ物であれば、虫歯リスクはないのでしょうか? 厚生労働省は、「糖類の含有量が0.5g/100ml以下」の食品に、この表示ができるとしています。ここでの糖類はスクロースだけではなく、マルトース(麦芽糖)やグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)なども含みます。確かに0.5g/100ml以下なら、糖類の含有量は少ないですが、虫歯リスクがゼロになったわけではありません。それに、対象となっていないオリゴ糖や多糖に分類される糖類が含まれる可能性があり、いずれも虫歯の原因となります。

 砂糖の主成分であるスクロースが虫歯の原因になっているとお話しした通り、甘い物は全般的に虫歯の原因になりがちです。それなら、「甘い物を食べなければ虫歯にならない」のでしょうか? いいえ。実は、ご飯やうどん、パンも虫歯の原因にはなります。これらの主成分であるデンプンは、唾液のアミラーゼという酵素で分解(化学的消化)され、マルトースやグルコースに変わり、スクロースと同様に口内を酸性に傾かせます。果物に含まれるフルクトースも同じで、砂糖のスクロースほど強くないにしても、ほとんどの食べ物が虫歯を起こす原因になり得ます。