同じ流れで、シミュレーションもほどほどにしないと、優秀な経営者ほど、考え続けて動けない人になってしまうこともある。たとえば、最近の傾向として、「医療・介護・ヘルスケアの新規事業を考えている」という相談をよく受ける。
「では、医療をやりましょう」と言うと、「人の命を扱うのは、もし何かあったら…」と言って、結局やらない。でも、何もしないわけにいかないから検討だけは続ける。自分たちの本業以外はよくわからないから”わからないお化け”が出没し、ただ「危ない、危ない」と言うのだ。
少し強めの表現になるが、「イザとなったらどうせやらないのに、検討しているフリだけは取り繕う」というムダでしかない時間が垂れ流されている惨状に出会うことが多い。
挑戦するのかしないのかでいったら、挑戦する。これを遊ぶように体得できたという意味で、私の学生時代はすごくラッキーだったと思っている。
圧倒的なビジネスアイデア数でミスミに入社
こうして学生ベンチャーにのめり込んでいた私だったが、大学を卒業後は、機械工業系の専門商社ミスミに入社することとなる。
きっかけは、私たちの学生ベンチャーが、ミスミの新卒採用イベントの仕事を受託したことだ。イベントは、10年後にどんなビジネスがあるか、そのアイデアを競う「21世紀の起業家コンテスト」というものであった。
ミスミはその年から新卒一括採用を大幅に縮小し、中途採用に力を入れる方針をとっていた。そうした中で、面白い学生がいたらそのときだけ採用しようということで、イベント形式で学生の採用を図ったのである。
ちょうど大学4年生だった私はイベントの対象学年であり、応募資格があったので、「自社が受注したイベントだから、応募総数を増やして盛り上げなくては」という気持ちで、とにかく必死でアイデアを考えて応募した。
当時はそもそもパソコンが普及していないワープロの時代だったので、パワーポイントのキレイな資料をたくさんつくる必要もなく、応募は、ハガキにアイデアを書いて出せばいいだけだった。
なので、本当にものすごい量のアイデアを書いて書いて書きまくった。そうしたら、なんと私が優勝してしまったのだ。しかも、「該当作品なし、ただし該当者あり」というなんとも不思議な結果だった。
その意味は、当時、『面接の達人』という本が大ヒットしていた中谷彰宏(なかたにあきひろ)さんの、審査委員長からの総括の中で明らかになった。