ツールやプラクティスやイベントを導入するだけではダメ

 アジャイルには、必ずと言っていいように出てくるモブワーク、かんばん、バーンダウンチャートなどの定番ツールやプラクティスがあります。また、イテレーション計画、デイリーミーティングなどのスクラムガイドで規定しているような定番のイベントもあります。しかし、これらを何も考えずにそのまま取り入れるだけでは、アジャイルを実践したことにはなりません。

 たとえばアジャイルでは「自動テスト」は大事だとよく言われます。では、なぜ自動テストは大事なのでしょうか。アジャイル開発では、タスクを完了する都度、過去の成果物も合わせて全てをテストします。完了したタスクの数が増えるほどテストの回数も量も膨大になり、人手ではやっていられなくなります。だから自動テストを入れて効率化を図る必要があるのです。

 しかし実際には、自動テストのツールを入れて1回動かすだけで繰り返しのテストをやらないといった間違った使い方をしているアジャイルチームは珍しくありません。自動テストのツールを入れればアジャイルになるわけではありませんし、ツールを自動実行したからアジャイルになるわけではありません。人手では時間がかかりすぎるテストをコンピューターにやらせておいて、人間はより創造的な仕事に携わって効率を上げられるようにするのが本来の目的なのです。

 このように、何も考えずに、アジャイルだからという理由で「かんばん」「自動テスト」などのプラクティスを導入したり、「イテレーション計画」「ふりかえり」と称するイベントを実施するだけではアジャイルにはなりません。ツールもプラクティスもイベントも、なぜそれが必要なのか、プロジェクトにどのような貢献をするのかを考えて導入しましょう。

 また、ただ導入するだけではなく、チームの成長に合わせて改善し続けていくことも大事になってきます。

アジャイルがうまくいっていると勘違いしている人へ