「首都圏の新築物件は全部人気」
という誤解は捨てるべき

 この他、売れ行き不振を象徴するニュースとしては、23年上半期における近畿圏の新築分譲マンション供給戸数は前年同期比15.9%減の 6075戸にとどまっている。首都圏の投資用マンションの供給戸数も同23.3%減の2820戸に沈んでいる。

 マンションは立地が最も重要で、価格水準も資産性(値下がりの仕方)も立地でほぼ決まる。新築マンションにおいては、好立地の物件が出れば売れるのは当たり前だ。

 そして、WORLD TOWER RESIDENCEや三田ガーデンヒルズのような好立地の高額物件は、今後も年に3~5件ほど出てくるはずだ。それらは両マンションと同じく、大規模再開発の一環で建設されるだろう。オフィス・商業・ホテルなどの複合開発が行われる場合、分譲マンションも同時に企画されることが多いからだ。

 だが、これは好立地に限った話だ。新型コロナウイルス禍が落ち着き、リモートワークの割合が下がり、オフィスが復権し、インバウンド需要も含めたホテルのニーズが急回復した今、マンションは相対的に採算が良くない不動産に成り下がってしまっている。まとまった土地が出てきても、マンションにならないことが多いのだ。

 好立地とはいえない新築マンションは、竣工から1年で中古扱いになる。その際には、周辺の中古価格相場に足を引っ張られ、値下がりリスクを抱える。一般消費者は首都圏の不動産について、「好立地の新築マンションは売れているが、そうでないものは供給が減るほど苦戦している」といった認識に切り替えた方がいいと筆者は考えている。